2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530074
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻 義昌 早稲田大学, 社会科学部, 教授 (30103617)
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Keywords | ロシア経済 / 労働市場 / 請負労働 |
Research Abstract |
2003年9月モスクワとペテルブルグに3週間滞在し、現地で労働経済関連の資料(地方の統計と雇用斡旋企業、人材派遣企業の発表するデータ)を収集したほか、モスクワ大学、科学アカデミー経済研究所、労働省労働研究所、モスクワ経済大学の研究者と交流したり、研究会に参加したりした。同年12月にも2週間滞在し、同じことをした。 2003年11月京都で日本国内のロシア労働経済の専門家を中心に12名がワークショップを(主催者は大阪経済法科大学の大津定美教授)開催し、参加した。この折、および12月のロシア出張の折、富山大学の堀江典江助教授と地域の労働市場分析にかかわる方法的諸問題について徹底的議論をした。 モスクワ大学では2004年度からロシアの労働市場についての共同研究プロジェクトを再開する件について意見を交換し、合意を得た。 ロシアにおける新しい雇用形態で特筆すべきは請負的労働の一般化である。とくに小売業で一般的であるが、旧来は売上高に応じて賃金を払うという出来高払い(個数賃金制)が支配的であった(これは労働法を骨抜きにするものである)が、さらにすすんで店舗の管理を含めて請け負わせる形が広がってきた。小売業ではこのようにアメリカ的な雇用形態が広がってきているが、製造業や他のサービス産業ではまだそれほど顕著な変化はみられない。しかし、解雇権が制限されている状況で日本のように全く無関係な職場への移動を命じ、本人の自発的離職を求めるケースも出てきている。 今後のロシアの労働市場の動向の鍵を握る要因は第一に、現在の資源輸出型の好景気がどれだけ持続するかということ、第二に官庁の数の大幅削減に見られるようなプーチン大統領による大規模な改革が労働政策に与える影響の有無である。労働法が改正されて間もないが、判例が流動的である。労働者保護政策の大幅緩和が期待されているが、その歩みは遅々としている。
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