2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530074
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
辻 義昌 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30103617)
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Keywords | ロシア経済 / 労働市場 / 請負労働 / 職業紹介事業 |
Research Abstract |
平成14年は9月と12月に、15年は3月、9月、12月に、16年は3月と9月にそれぞれ2週間モスクワとペテルブルグにて資料収集、人材派遣会社とのインタヴュー、科学アカデミー付属経済研究所、労働省付属労働研究所、モスクワ国立大学経済学部労働経済講座での共同研究に参加した。とくに有意義であったのはモスクワにおける労働政策専門家の私的なセミナー(月一度、モスクワ経済高等学校大学を会場、参加者約20名)に参加し、政府機関や学界の指導的専門家とフランクな討議をすることができたことである。 ロシアでは労働法が2年前に改正されたばかりであるが、現実の労働関係は依然として急速な勢いで変化し続けており、立法はおろか調査や研究が完全に立ち遅れている。このなかで専門家の大部分はこうした荒波によって零落した住民の保護を力説する活動に重点をおいており、社会の中心を占めている民間での典型的な労働関係の現状の調査から遠く隔たっている。そこで、政府部内において、経済発展を優先に考える人々からは保護主義的なスタンスゆえに敬遠される傾向が出てきているのが憂慮される。 若干の調査でおぼろげながら分かってきたことは、現在のモスクワ、ペテルブルグでの典型的で反映している企業における労働関係は全く「自由主義的」であるということである。つまり、団体協約の不在、個別的労働契約、請負賃金制度、歩合給、という雇用主にとって最も都合のよい、生産性の最も高い契約関係が支配的であるということである。 しかしながら、派遣労働など近代的な労働力活用システムは依然として未発達で、エージェンシーも高級職業紹介所の役割から脱皮していない。
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