2004 Fiscal Year Annual Research Report
18〜19世紀半、ヨーロッパ在来産業のアジアからの自立過程:ジャパンを中心に
Project/Area Number |
14530090
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Research Institution | HITOTSUBASHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 良隆 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (50004198)
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Keywords | ジャパン / 材料転換 / ラッカー / 産業地域 / 東洋風物産 |
Research Abstract |
この研究は、17世紀以降、ヨーロッパに輸出された東アジアとりわけ中国と日本の「漆器」が、18世紀以降のイギリスを中心とする消費社会のなかでどのように模倣され、ついには「ヨーロッパのラッカー(ジャパン)」へと変容を遂げたかを、以下の側面から考察した。 1)技術。ヨーロッパの伝統的なラッカー技法とその展開を、ヴェネチア、スパ、パリ、ポンティプール、ウルヴァハンプトンについてたどった。 2)市場と嗜好。東洋のラッカー「漆」のインパクト、とりわけ漆の持つ深みのある光沢(質感)と、その優れた耐久性がヨーロッパの標準となっていったことを明らかにした。 3)模倣から展開へ。ヨーロッパ在来の技法とヨーロッパの材料による模倣がおこなわれ、東洋とは異なった材料による、同じあるいはそれ以上の機能と、同じ美しさが達成されたことをもって自立とした。 4)それを可能にした産業変革のメカニズム。産地の形成と集積効果。技法の蓄積、伝播を、技法所にそくして解明した。 以上の点について、ロンドン、ウルヴァハンプトン、パリにおける産業発展を解明した。その結果、決定的な要因は、材料の転換と、それを促す技法の蓄積・伝播にあることが判明した。 さらに、「漆器」から「ジャパン」への転換に見られたと同じような材料転換の過程が、「木綿」「絹」「磁器」等の他のアジア物産についても試みられ、その多くにおいて成功を収め、ヨーロッパはより低い技術で、しかしながら材料を転換させることによって、東洋と同じ機能と美しさを持つ製品を作り出したことを指摘した。
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