2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530096
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荻野 喜弘 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (30160790)
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Keywords | 産業革命 / 三井物産 / 筑豊石炭鉱業組合 / 八幡製鉄所 / 市場圏 / 製鉄労働 |
Research Abstract |
1.本研究は、対象時期を日本の「産業革命期」とし、研究対象として近代日本にとって重要な役割を担った石炭産業と八幡製鉄所を取り上げ、国家・経営・市場の関係について分析する。具休的には、国家と市場の接点に位置する経営に着目して、国家と市場のあり方を、商品・労働市場における経営活動に即して明らかにし、両者を比較検討することによって、近代日本資本主義の体質と実態の一端を明らかにすることを目的とする。 2.「産業革命期」の商品市場は、石炭や金物を含めて、外国貿易、政府と民間、大手業者間、中小業者など取引形態を異にした市場圏からなる複層的な構造をなしていた。 3.三井物産は、石炭市場と金物市場において、有力取引先を確保することによって主導的な役割を果たしたが、自由な競争よりも支配力を志向する傾向をもっていた。いわゆる「独占的」体質である。 4.筑豊石炭鉱業組合は、筑豊炭鉱業の同業者団体であり、同業者間の利害調整、関連業界等との折衝、政府に対する意見具申や陳情などにあたった。「産業革命期」の市場との関わりをみると、自由競争による混乱を避けるために、商品市場では政府ではなく同業者団体による、労働市場では同業者団体ではなく政府による、それぞれ制度的補完を必要不可欠としていた。その結果、筑豊石炭鉱業組合という中間組織が商品・労働の両市場において対照的な役割を担っていたのである。 5.八幡製鉄所の役付職工について分析し、製鉄所労働者を5つ職種群に大別するとともに、同じ熟練労働者が製鉄所に独自な熟練職種と一般的な熟練職種では、異なる職務経歴と労働市場とをもっていたことを明らかにした。
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Research Products
(2 results)