2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14530102
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
小島 健 立正大学, 経済学部, 教授 (00211897)
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Keywords | ベネルクス / 経済統合 / ヨーロッパ統合 / ベルギー:オランダ:ルクセンブルク / 戦後経済 |
Research Abstract |
本年度は,ベネルクス経済同盟の基礎となった1948年発足の関税同盟の設立に到る過程について,実証的研究を行った。ベルギーのロンドン亡命政府は,戦後自国のみでの経済再建は困難とみて同じヨーロッパにパートナーを持つ必要性を認識した・パートナーの候補はイギリスをはじめいくつかあったが,結局,ベルギーとの密接な関係を望んだのは同じ低地地方のネーデルラント(オランダ)とルクセンブルクであった。 亡命中のベルギー・ネーデルラント,ルクセンブルク三国政府は,第二次世界大戦中に通貨協定(1943年)と関税協定(1944年)を締結した。両協定は,第二次大戦中の戦後再建構想の一環であり,また,アメリカが主導する戦後世界における欧州国家の対応手段としての側面も持った。 ネーデルラントの解放は大幅に遅れ,占領と戦争による被害もきわめて大きかった。このため,関税協定が発効したのは1948年のことであり,これにより域内の関税は撤廃されたが,数量制限等の非関税障壁により実際の商品移動の自由はほとんど達成されなかった。しかし,政治指導者たちは,ベネルクス三国が商品,労働力,資本が自由に移動する経済同盟を設立することを目指して1949年には予備同盟を発足させることになった。 本年度の研究から,ベネルクス同盟が,戦中から戦後直後における政治指導者の強力な意志の産物であること,また,近隣の英独仏と密接な経済協定を結べなかったベネルクス諸国が,「規模の経済」が重要性を増してくる戦後世界において地域統合の先駆けとならざるを得なかった点を明らかにすることができた。
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