2005 Fiscal Year Annual Research Report
金融サービスの利用者の視点から見た金融システムのパフォーマンスに関する実証的研究
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14530108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
家森 信善 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (80220515)
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Keywords | 地域金融 / リレーションシップバンキング / 信用金庫 / 協同組織金融機関 / ソフト情報 / 中小企業 / 企業金融 / 金融再編 |
Research Abstract |
本年度は、金融サービスの利用者としての中小企業に関心を絞って分析を行った。海外の研究では、金融機関の再編が中小企業に与える影響についてホットな問題となっている。そこで、『信金中金月報』(2005年5月)に発表した論文では、まず、金融機関の再編に関する先行研究を利用して、金融再編の理由や動機を整理した。その後、信用金庫再編の主たる動機である規模の経済性について、簡単な統計分析によって議論した。信用金庫の費用構造において規模の経済性は弱いながらも存在していると考えられるので、その意味で最近の合併の増加は理解できる。しかし、本稿では、大規模化のデメリットも強調している。先行研究は、リレーションシップバンキングにふさわしいのは小規模で階層性の少ない組織であると指摘しており、会員相互の信頼に基づく顔の見える関係を重視したリレーションシップ貸出という信用金庫の強みが、大規模化によって失われる恐れがあるからである。合併による無理な拡大は、信用金庫にとって大きなマイナスを伴うことに十分な注意が必要であろうと結論している。 一方、『RPレビュー』に発表した論文では、情報通信技術が発達しても、中小企業金融における情報問題が完全に解消することはなく、中小企業金融は地域的な性格を持ち続けるであろうという認識の元で次のような分析を行った。まず、先行研究を展望し、銀行は、自行の支店と顧客企業の距離が短いほど、また、顧客企業と他の金融機関の店舗の距離が長いほど、高い貸出金利を提示しており、地元の銀行店舗の立地や金融市場の競争環境が、中小企業の資金コストに影響していることを確認した。わが国ではメガバンク再編が最終局面に到達しつつあるが、そのプロセスでソフト情報が失われる恐れがあり、それを補完するためにも地域金融機関の機能強化は重要であると結論している。
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