2002 Fiscal Year Annual Research Report
利益概念と会計の職能に関する制度的および概念的研究
Project/Area Number |
14530166
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
万代 勝信 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (80209709)
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Keywords | 利害調整 / 情報提供 / 収益費用アプローチ / 資産負債アプローチ / 商法会計 / 企業会計原則 / 減損会計 |
Research Abstract |
本年度は、まず商法、企業会計原則および最近設定された会計基準を取り上げ、それぞれが予定していると思われる会計職能と利益概念を分析検討した。 商法は伝統的に利害調整職能を重視し、配当可能限度額の計算の目的から、実現利益の計算を軸としてきた。しかし、本年の商法改正は、従来の利害調整職能を重視する姿勢とは異質の改正を含んでいると解されている。すなわち、法定準備金の減少手続が新たに設けられたことと、減資差益が法定準備金から削除され、その結果として配当可能限度額に算入されることになったことである。しかし、実質的な減資と解すれば、上記の改正を利害調整の変質と解す必要のないことの知見を得た。 つぎに、わが国で企業会計の憲法とされてきた企業会計原則を分析した。その結果、企業会計原則は情報提供職能を重視し、収益費用アプローチを採り、実現利益の計算を重視していることを確認した。取益費用アプローチは、評価ではなく、配分を基本的なコンセプトとし、意思決定情報として有用な純利益の計算を重視している。 最後に、最近設定された会計基準として、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」を取り上げて、分析検討した。わが国の減損会計基準は、一般にいわれているような時価主義会計ではなく、固定資産について従来から行われてきた配分に基づいた会計処理基準であることの知見を得た。 以上の結果、わが国の会計制度は、一般的にいわれているように原価主義から時価主義へと転換が行われたわけではなく、従来の取得原価主義会計の枠組みの中で説明が可能であることの知見を得た。
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