2003 Fiscal Year Annual Research Report
企業結合の会計規制が企業行動と市場の株価形成に及ぼす影響に関する理論・実証研究
Project/Area Number |
14530172
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
薄井 彰 早稲田大学, 大学院・ファイナンス研究科開設準備室, 教授 (90193870)
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Keywords | 会計規制 / 企業結合 / 保守主義 |
Research Abstract |
1968〜2001年の東京証券取引所上場企業のパネル・データを用い、会計の保守性を表すパラメータとして、資産評価における保守主義要因と会計利益の認識ラグ要因の2つを推計し、それらと、財務面における企業特性、ステーク・ホルダー間のコンフリクトおよび企業のガバナンスとの関係を分析した。 分析の結果、収益の成長性の高い企業は、資産評価における保守主義要因より会計利益の認識ラグ要因のほうが会計の保守性に与える影響が大きい。株主と債権者の利益分配に関するコンフリクトが大きい企業ほど、保守的な会計を選択する傾向にある。また、企業のガバナンスとの関係では、経営者は純資産を過小には評価せず、会計利益を過小に評価する傾向にある。株主構成が会計利益の認識ラグの重要な決定要因となっている。 2003年に企業会計審議会は「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を公表し、パーチェス法を原則としながら、対等合併では持分プーリング法の適用を認めた。対等合併のケースでは、経営のコントロールが確立していないので、ステーク・ホルダー間のコンフリクトが大きいと予想される。実証結果の帰結からは、このような状況では、純資産を過大評価することの困難な保守的な会計を選択することが望ましい。対等合併において持分プーリング法を適用することは、ステークホルダーが契約条項として会計数値を利用するという観点から、経済合理性が認められる。ただし、持分プーリング法の適用は経営のコントロールの確立を曖昧にさせる危険をともなう。また、過小評価の資産を合併後に売却することによって、利益を捻出することも可能である。持分プーリング法の安易な適用や利益操作を防ぐことが必要であろう。基準設定における重要な論点の1つは、ガバナンスとの関係から、保守主義の適用をどの程度まで認めるかということである。
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Research Products
(1 results)