2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国財務ディスクロージャーと監査制度論-社会的なアプローチ-
Project/Area Number |
14530181
|
Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
李 文忠 福岡工業大学, 社会環境学部, 講師 (60341476)
|
Keywords | 社会的アプローチ / 中国固有の会計思想 / 西洋的会計監査思想 / 歴史的依存性 / 相互依存性 / 誠信(Integrity)危機 / 不信の構造圏 / 文化の危機 |
Research Abstract |
先行研究は、中国の会計・監査思想について歴史的に調査した。その結論は、固有の中国式簿記は一種の農業経済に適する簿記である。1949年以降、農業を中心とする計画経済に適する会計は中国式簿記が改良されたもので、本質的には農業経済に適する会計である。これに対して、西洋会計は商業・工業経済に適する会計である。最近中国の現代化(工業化)に伴い、会計は必然的に西洋会計へ変革しなければならなくなった。また、ほぼ一世紀の歴史を見ると、中国会計監査思想は、政治のイデオロギーにより左右されがちである。イデオロギーは中国会計監査思想に決定的な影響を与えたといえる。以上の研究は、制度の政治的依存性、歴史的依存性、文化的依存性などがあることを明らかにした。制度の形成はそれらの相互依存性に制約され独自な形で変容している。このように、特定の国の制度を観るべきである。いわゆる社会的アプローチはそれらの依存性を明らかにし、その制度のあり方を研究するものである。 このような視点から,平成14年度の9月には、中国監査事件を中心に現地調査を行った。その結果、監査システムが有効に機能するためには,精神的な面において監査人の人格や,独立性,正当な懐疑心など,技術的な面おいてリスクアプローチや,監査品質管理や,継続的専門教育など等々,法規整備の面において法,会計基準,監査基準,職業倫理基準,財務情報開示基準などをそろえるだけでは,不十分である。制度そのもののあり方とその社会と合致する合理的な制度を探り出すのが重要だと主張している。そして制度の有効的な機能は,法規制約のほかに、社会における良好な倫理,道徳規範をもつ環境が不可欠であり、そしてその環境の構築は、経済の成長とともに社会文化、人々の「精神的文明」も成長しなければいけない。それを実現するには教育が重要な役割を果たすべきである。 また、平成14年度の2月には、中国改革開放後の財務ディスクロージャー制度の構築を中心に現地調査を行った。調査は90年代の初期から、中国証券取引市場の成立に伴い、特定の会社を選別してその財務諸表の変遷に対して研究し、財務諸表の面において、その政治的依存性、歴史的依存性、文化的依存性を明らかにすることである。
|
Research Products
(2 results)