2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540210
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
桑原 類史 徳島大学, 総合科学部, 教授 (90127077)
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Keywords | フーリエ積分作用素 / スペクトル幾何学 |
Research Abstract |
昨年度は,コンパクト多様体上の磁場における力学系について,古典系の周期軌道に対応する量子エネルギー分布について考察し,一定の成果を上げることができた。この研究の為には,Guillemin達によって考案されたエルミート型のフーリエ積分作用素の理論が本質的な役割を果たした。これを踏まえ,本年度は,「エルミート型のフーリエ積分作用素」の理論の更なる整備と応用を目標として研究を行った。 Hormander達によって構築,整備されてきたフーリエ積分作用素は,ラグランジュ部分多様体に対応する作用素であるが,より条件を緩めたイソトロピー部分多様体に対応したフーリエ積分作用素がエルミート型フーリエ積分作用素である。古典周期軌道などの古典力学における幾何学的対象として得られるイソトロピー部分多様体を量子力学的構造である作用素に関連づけるものとして極めて有用なものである。 本年度の研究では,エルミート型フーリエ積分作用素について,まず,エルミート型フーリエ積分超関数の定義,シンボルの概念の定義を明快にすることを目指した。既に,Guilleminによる論文「Symplectic spinors and partial differential equations」(1974)やL.Boutet de MonvelとV.Guilleminによる書物「The Spectral Theory of Toeplitz Operators」(1981)で基礎理論の展開はなされているが,本研究課題に応用する観点から,さらに整備すべき部分がある。特に,作用素の合成や連続性に関連して,作用素のシンボル解析の精密化が必要である。本年度は,作用素の核となる超関数およびそのシンボルの定義など基礎的な概念の見直しを行うことからはじめており,特に公表すべき新しい結果は得られていない。来年度もこの方向での研究を継続して進める予定である。更に,その成果を力学系に関する具体的問題に適用することを目指す。
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