Research Abstract |
前年に引き続き,非可換幾何学の観点から量子ホール系を解析した.量子ホール系は最低ランダウ準位に束縛された電子の作る世界であるが,この電子のx座標とy座標は交換しない,という著しい特徴を持つ.その結果,電子が内部対称性SU(N)を持つ場合,量子ホール系の対称性はW_∞をSU(N)拡大したW_∞(N)で与えられる. 先ず,占有率がν=2の二層ホール系の基底状態を研究した.この系は破れたSU(4)対称性を持つが,SU(4)対称性極限で,基底状態を厳密に求め,3つの相(spin相,canted相,ppin相)があることを示した.更に,SU(4)の破れの効果を摂動論的に考察した.摂動効果でspin相とcanted相の境界は変化をしないことを,一方,canted相とppin相の境界は大きく変化することを示した.これは,数値的厳密対角化の結果と一致し,澤田等や福田等の実験結果をよく説明する.この研究成果は半導体国際会議(Flagstaff, USA, July 26-30, 2004)で発表した. 次いで,量子ホール系に於けるスカーミオン励起を,非可換幾何学の理論的枠組みの中で厳密に取り扱った.従来知られていなかった非可換平面上のソリトン特有の新たな位相的性質が導かれる可能性を指摘した.特に,位相的荷電と実際の電荷との間に関係式が導かれる.また,非可換ソリトン理論の成果を具体的な物理系で実験的に検証できる点が新しい.この研究成果はスカーミオン国際会議(KIAS, Korea, October 25-27, 2004)で発表した. これらの研究成果は5編の原著論文として国際的著名誌に発表した.
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