2004 Fiscal Year Annual Research Report
クォークグルーオンプラズマおよび高密度ハドロン物質のダイナミクス
Project/Area Number |
14540255
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅川 正之 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50283453)
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Keywords | 格子ゲージ理論 / スペクトル関数 / 高エネルギー重イオン衝突 / ユニバーサリティー / 相転移 / 揺らぎ / 状態方程式 / 有限温度場の理論 |
Research Abstract |
1 量子色力学(QCD)における有限温度におけるスペクトル関数を、チャーム・反チャームクォーク対のベクトル(J/Ψ)、軸性ベクトル(η_c)の2つのチャンネルに対してユークリッド格子上で測定された相関関数から我々のグループによって理論的に整備・発展された最大エントロピー法を用いて構成した。その結果、両方の粒子共、QCD相転移温度よりも十分高い温度、すなわち1.6T_c程度までは存在し続けること、そして、およそ1.6T_cと1.7T_cの間というごく狭い温度領域の間で消滅することを初めて示した。このことは、クォークグルーオンプラズマ相は通常信じられていたようなクォークとグルーオンとがほぼ自由に振る舞っている状態とは違い、ハドロン的な励起も存在し続けるような、強結合系であることを示唆する。さらに、格子色力学を用いたクォークグルーオンプラズマの粘性係数の研究も開始し、予備的な結果を得た。 2 QCD相図上には、相転移がcross overから一次相転移に移り変わる点であるcritical end point(CEP)が存在する可能性が示されている。我々はまず相転移論におけるユニバーサリティーに基づきCEPが存在する場合の一般的な状態方程式を導き、CEPは系が時間発展する際に相図上でアトラクターとして働くことを見出した。更にそのようにして求めた状態方程式と時間変化する系の臨界現象の理論を用いて、高エネルギー原子核衝突において生成された系が時間発展の過程でCEPの近傍を通過する場合の揺らぎや相関距離の時間変化、および高エネルギー原子核衝突における観測量への影響などを、初めて統一的な枠組みの中で議論した。
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Research Products
(5 results)