2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540280
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中里 弘道 早稲田大学, 理工学部, 教授 (00180266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯浅 一哉 早稲田大学, 理工学部, 助手 (90339721)
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Keywords | 量子系の時間発展 / 量子ゼノン効果 / デコヒーレンスの抑制 |
Research Abstract |
本研究課題の究極的目標は,量子系の時間発展の具体的解析と場の量子論によるその基礎付けである.本年度は,量子系の時間発展,特に測定操作が及ぼす量子系への本質的影響に関して,これまでの研究成果をさらに発展させる形で研究を進めた. 測定操作が量子系に及ぼす効果の例としては,いわゆる量子ゼノン効果が古くから知られるが,実験技術の進展に伴ってその実証可能性が高まるにつれ,改めて近年活発に議論されている.これは,量子力学では,測定操作によって系の状態が確率振幅の重ね合わせ状態から測定に対応した状態に移行する(これは,誤解を招きやすい表現ではあるが,「波束の収縮」と呼ばれる)とされること,Schroe dinger方程式で記述される量子系の時間発展がユニタリーであることに起因している.同じ測定を繰り返すことで対象系の時間発展が遅くなる量子ゼノン効果に関しては多くの理論的,実験的議論がなされている. 本年度はまず,可解なモデルに基づいた量子系の時間発展の異なる3様式-時間発展初期のガウス型時間発展,続いて現れる指数関数型崩壊形式,長時間領域での冪型崩壊形式-の詳細な解析結果をまとめた.この成果は会議録として間もなく公表される予定である. 続いて,測定操作の及ぼす効果の別の側面として,全体系の一部にのみ繰り返された測定操作によって,系の残りの部分が,その初期状態とは関係なく,一定の純粋状態へと移行する機構(状態の「純化」機構)を明らかにした.この機構が機能する条件を一般的に明示するとともに,簡単なモデル量子系では具体的に例示した.この機能は,現在量子情報や量子計算研究分野で課題となっているデコヒーレンス(量子的非干渉化過程)の抑制機構としても利用できる可能性がある.(Physical Review Lettersに公表済み)
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Research Products
(1 results)