Research Abstract |
超流動ヘリウム中に不純物イオンとして,重い放射性イオンを導入し,電場による搬送と,超流動ヘリウム液相表面からの取り出しについて放射線検出法を用いて実験研究した.この研究計画によって超流動ヘリウム中における重い不純物イオンの生成,搬送,引き出しに関して,放射線検出法によって観測する新しい実験方法を確立することができた. 本年度は計画の最終年度として,超流動ヘリウム中の正イオンを液相表面から取り出すさいの確率,温度依存性,ポテンシャル障壁の高精度決定に取組んだ. 第1に,^<215>Poイオンを用いて今回,線源からの放射性イオンの利用効率を上げることを目的とし,α線源表面付近の電場を大きくして重いイオンの引き出し効率をさらに改善した. 第2に,液相表面からの正イオンの引き出しに関して,超流動ヘリウム中のパルス状第2音波を使って,瞬間的,局所的な温度上昇を実現することに成功した.この方法をさらに効率よく使えるように改良した.これらの改良によって,超流動ヘリウム中の正イオンを液相表面から取り出すさいの確率,温度依存性,ポテンシャル障壁の高精度決定が実現した. このほか,放射性核ビームを使って,分光学実験を進めることが出来た. 同時にこの方法は,核物理学,天体核物理学の研究の分野において,極冷(零エネルギー)の放射性核ビームを生成する新しい実験方法として期待に応えることができる.多彩な重イオン反応生成核を停止させ,核分光するための新しい捕集体として,ここでは核偏極,整列が保持される超流動ヘリウムを提案している.放射性核ビームの新しいプロジェクトが世界で発足しているが,その中でもドイツ・ダルムシュタットのGSI(重イオン研究所)では,本計画に注目している.
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