Research Abstract |
1.占有率1/2での基底状態と励起状態の研究 占有率1/2の一層系では,複合フェルミオンのフェルミ液体状態,分数量子ホール効果を示すムーア・リード状態,ストライプ状態と相互作用によって3つの基底状態が実現しているが,二層系では更にパラメターが増えるためにより多彩な基底状態と励起状態が期待されてきた.本研究では,各層の厚さwと層間距離dによる相互作用の変化と,層間トンネリングの強さtの変化により基底状態と最低励起状態がどのように変化するかを,厳密対角化法を用いて研究し,この占有率での系の振る舞いの総合的な理解を得ることができた.先ず,実験状況近傍のwとdにおいては,tの強さにより,基底状態は二層系に特有のハルペリンの331状態から一層系と同じムーア・リード状態へ連続的に変化すること,一方最低励起状態は準位交差を起こして,通常の準粒子状態から,非アーベリアン統計の準粒子状態に変化することを明らかにした.次に,dが大きい場合には,t=0では量子ホール効果は起こらないが,tが大きくなることによって分数量子ホール効果状態が回復することを明らかにした.また,この回復にはwとdがある程度大きいことが必要であり,これらが小さいときには分数量子ホール効果状態ではなく,フェルミ液体状態が実現することを明らかにした. 2.占有率1での基底状態の研究 占有率1では層間距離dが小さい場合には層間の相関が発達し,励起子状態が実現し,興味深い実験が各種行われている.このときの基底状態がdによりどのように移り変わるかを詳細に研究するために,DMRG法による研究を計画し,プログラムの開発を行った.完成したプログラムにより,新たな結果が得られつつある. 3.一層系の研究 一層系の基底状態の相互作用依存性,ノイズに寄与する励起状態の温度依存性を明らかにした.これらにより二層系研究の重要なヒントが得られた.
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