2003 Fiscal Year Annual Research Report
単一及び結合量子ドット系の量子コヒーレンスの理論的研究
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14540300
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
高河原 俊秀 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (00111469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 英彦 NTT物性科学基礎研究所, 主任研究員
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Keywords | 半導体量子ドット / 量子状態制御 / 量子コヒーレンス / スピン緩和 / 多励起子状態 / コヒーレント光学現象 |
Research Abstract |
最近、高分解能NSOMにより単一量子ディスクからの励起子発光と励起子分子発光の空間プロファイルに違いがあることが、実験的に見出された。即ち、励起子分子発光の方が励起子発光よりも、空間的に局在している。これを理論的に調べるには、それぞれの発光に伴う近接場をMaxwell方程式を用いて計算する必要があるが、ここでは定性的な特徴をつかむために、発光の起源となる分極場の拡がりを調べ、それから発光の空間プロファイルを計算した。励起子遷移の分極分布は励起子の重心運動のenvelope関数で決まる。一方、励起子分子から励起子への遷移の分極分布は、励起子分子を形成する二つの電子-正孔対のうちの一つが発光再結合する振幅と終状態の励起子波動関数との重なり積分が、その拡がりを決めている。一般に励起子分子の波動関数は、二つの励起子の波動関数の単なる積ではなく、なんらかの引力的な相関を持っているため、励起子分子発光の方が空間的に局在していることが予想される。ここでは、量子井戸中の層厚ゆらぎにより生じた量子ディスクを念頭においているので、量子井戸中の励起子分子に対する波動関数に、面内の閉じ込め関数をかけたものを用いて、分極分布を計算した。Maxwell方程式の線形性から、近接場の分布は分極分布に比例すると考えられるので、分極の2乗の分布でもって、発光の空間プロファイルを近似する。このような考えのもとに、GaAsの円盤状ディスクについて発光の空間プロファイルを計算した。発光分布の半値幅(FWHM)で比較すると、(励起子分子)/(励起子)=0.76となっており、松田等の実験結果と良い一致を示した。これは、単一量子ドット内での波動関数のひろがりを初めて観測したものとしてクローズアップされ、Physics Today Nov. issue,p.14(2003);Physical Review Focus,Oct.22,2003(The Travels of An Exciton)において、特筆すべき研究成果として紹介されている。 研究分担者の鎌田主任研究員は、InGaAs量子ドットにおける励起子のスピン緩和時間を測定し、その温度依存性、サイズ依存性を系統的に調べた。その結果、スピン緩和機構として励起子と音響型格子振動との相互作用が重要であることを見出した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Takagahara, Selvakumar V.Nair: "Theory of spatial profiles of exciton and biexciton emission in a single quantum disk"QELS 2003 Technical Digest. QThE3 (2003)
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[Publications] K.Matsuda, T.Saiki, S.Nomura, M.Mihara, Y.Aoyagi, S.V.Nair, T.Takagahara: "Near-field Optical Mapping of Exciton Wave Functions in a GaAs Quantum Dot"Phys.Rev.Lett.. 91. 177401 (2003)
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[Publications] T.Takagahara: "Quantum Coherence, Correlation and Decoherence in Semiconductor Nanostructures"Elsevier Academic Press. 484 (2003)