2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540310
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
萱沼 洋輔 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (80124569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
魚住 孝幸 大阪府立大学, 工学研究科, 講師 (80295724)
田中 智 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (80236588)
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Keywords | 内殻励起原子移動 / Knotek-Feibelman機構 / 2正孔束縛状態 / 非断熱遷移 / 共鳴X線ラマン散乱 / グラファイト / 擬ヤーンテラー効果 / ポンププローブ分光 |
Research Abstract |
1.グラファイトの内殻励起状態における原子移動 グラファイトの1s内殻から内殻励起子状態への励起にともなう共鳴発光スペクトルの測定がなされ、励起エネルギー位置から低エネルギー側に伸びる発光スペクトルの裾構造が報告された。我々は、これを内殻励起子状態での炭素原子の非対称移動によるホットルミネッセンスと同定し、擬ヤーンテラー効果のモデルに共鳴2次光学スペクトルの理論を適用してスペクトル計算を行った。その結果、内殻正孔の寿命を数10フェムト秒ととることで、偏光依存性を含めて実験スペクトルを良く再現しうることを見出した。これにより、内殻共鳴励起により、対称性の破れを伴う強い原子変位が固体中においても起きることが明らかになった。(Physical Review Lettersに投稿中) 2.内殻励起子状態における電子遍歴性 内殻励起子状態で励起電子が結晶内を遍歴して広がってゆく効果を取り入れて、クラスターモデルによる計算を精密化するGreen関数法を開発した。この結果、X線吸収の終状態では浅く束縛された電子が、格子緩和の進行にともない、深い束縛状態へと移行してゆく過程を理論スペクトルを通じて明らかにした。 2.パルスX線・パルスレーザーの組み合わせによる超高速非線形分光 超短パルス技術の進歩により、サブフェムト秒オーダーの時間分解能での光学測定の可能性が開けてきたことをふまえ、パルスX線とフェムト秒レーザーとの組み合わせを用いた超高速電子波伝播の測定実験を提案した。1次元分子鎖のモデルに対して、時間分解応答を計算し、フェムト秒レーザーにより生成された励起子の伝播を、共鳴X線ラマン過程を通じて直接観測できることを示した。 3.2正孔状態のダイナミックス 内殻励起状態のオージェ崩壊により、価電子レベルに生成された局在2正孔状態が、結合不安定性をもたらす結果、表面からの原子・イオン脱離、吸着子の脱離などを引き起こすと考えられている(Knotek-Feibelmanのモデル)。われわれは正孔の固体中への拡散による中性化の効果を考慮した動的モデルを立て、積分方程式の形に運動方程式を書き直ことで、完全な量子力学計算が可能であることを見出した。具体的な表面吸着子のモデル(Andresonモデル)について前年度の計算をさらに拡張して、600フォノン状態まで取り入れた大規模数値計算を実行し、正孔の遍歴性の効果と、原子移動によるボンド切断、2正孔間のクーロン斥力の効果の競合・協調関係を調べた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] S.Tanaka, S.Mukamel: "Probing Exciton Dynamics using Raman Resonance in Femtosecond X-Ray Four-Wave Mixing"Physical Review A. 67・3. 33818 (2003)
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[Publications] S.Tanaka, S.Volkov, S.Mukamel: "Simulation of Time-Resolved X-Ray Diffraction in Molecules"Journal of Chemical Physics. 119・9. 4891-4904 (2003)
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[Publications] L.Campbell, S.Mukamel, S.Tanaka: "Ligand Effects on the X-Ray Absorption of a Nickel Porphyrin Complex"Chemical Physics, Special Issue. (in press).
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[Publications] Y.Kayanuma, S.Tanaka: "Theory for Resonant X-Ray Emission of Core Excitons with Lattice Relaxation : Changeover from Shallow to Deep Level"Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena. (in press).
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[Publications] A.Yasui, T.Uozumi, Y.Kayanuma: "Quantum Dynamics of Phonon Assisted Emission of Carriers at Deep Level Centers"Solid State Communications. (in press).