2002 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピン海スラブの沈み込みに伴う温度・速度構造とスラブ内地震・地表変形の地域性
Project/Area Number |
14540397
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉岡 祥一 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (20222391)
|
Keywords | スラブ / フィリピン海プレート / 温度分布 / 地殻熱流量 / 南海トラフ / 四国海盆 / 海溝型巨大地震 |
Research Abstract |
今年度の研究では、断熱圧縮による温度上昇・スラブの沈み込みに伴う摩擦熱・粘性発熱を取り入れた熱伝導方程式と、粘性率の温度・圧力依存性を考慮した流線関数を与える運動方程式をたて、熱と流れの連成問題を2次元差分法によって解くことにより、フィリピン海スラブの沈み込みに伴う温度分布を計算した。具体的には、最新の研究成果を元に南海トラフから沈み込むフィリピン海プレート上面の3次元的形状を決定し、四国海盆の形成史を考慮した年齢依存の境界条件を与えたフィリピン海プレートの沈み込みに伴う温度分布の計算を行い、四国沖で観測された地殻熱流量のデータと比較検討した。さらに、数値シミュレーションによって得られた温度分布の断面のデータを平面のデータに変換し、四国沖の南海トラフから沈み込むプレート上面の温度分布を推定した。その結果、フィリピン海プレートの過去の速度の変化の時期が地殻熱流量の計算結果に与える影響はあまり大きくないが、沈み込み速度の大きさが地殻熱流量に与える影響は大きく、沈み込み速度が遅いと地殻熱流量の計算結果は高くなる傾向があること、プレートの沈み込み角が計算結果に与える影響は大きく、特に流れ場に関しては沈み込み角が大きいほどマントルウェッジ内で対流が起こりやすいこと、内部発熱要素のうち、放射性元素の壊変に伴う発熱及びプレート間に働く摩擦熱が温度分布に与える影響は小さいこと、地殻熱流量の計算結果は、ほとんど沈み込んでくるスラブの年齢によって決まってしまうこと、などが明らかになった。推定された海溝型巨大地震の発生域は、Hyndman et al.(1995)によって推定されているものより、全体的に北側へずれる傾向が見られた。
|