2004 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯対流圏準二年振動とエルニーニョ南方振動の数十年スケール変調に関する研究
Project/Area Number |
14540406
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Research Institution | TOYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
川村 隆一 富山大学, 理学部, 教授 (30303209)
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Keywords | 準二年振動 / ENSO / エルニーニョ / モンスーン |
Research Abstract |
豪連邦科学産業研究機構(CSIRO)大気研究部門で開発された気候モデル(Mark3 CGCM)の制御実験結果から、南アジア夏季モンスーンの前兆現象、すなわち、春季の熱帯インド洋における降水量、SSTの赤道非対称偏差が再現されているのが見出された。インド洋北部及び南シナ海上の活発な降水に伴う対流加熱により、南アジア一帯の対流圏上層で高気圧性循環が強化されている(ロスビー波応答)様子が明瞭である。高気圧偏差に覆われた、チベット高原から西の中央アジアにかけての地域では降水量が減少している。チベット高原の一部を除いて、降水量減少と対応して土壌水分も減少している。一方、高気圧偏差と関連して短波入射量も増加している。土壌水分量減少と短波入射量増加の地域と地表面温度上昇の地域が良く対応しており、熱帯海洋上の積雲対流活動がremote forcingとなって、ロスビー波応答を介しアジア大陸の陸面水文過程に実質的な影響を与えていると解釈できる。春季の陸面温度の上昇は海陸間の熱的コントラストの増大に寄与し、モンスーンを強める方向に働く。一連のプロセスを逆符号にすれば、今度は反対に弱いモンスーンがもたらされる。これらの様相はKawamura et al.(2001)が指摘した、主にENSO衰退期において陸面水文過程が寄与する間接的インパクト(赤道非対称インパクト)を説明していると考えられる。ENSOの間接的インパクトはモンスーン前期に有意な影響を与えるが、モンスーン後期までその影響は持続しないという観測事実とも矛盾していない。 以上のように、観測とモデルの比較結果から、ENSO衰退期においてアジア大陸の陸面水文過程が間接的に寄与するENSOインパクトの存在が大気海洋結合モデルにより検証された。
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Research Products
(3 results)