2004 Fiscal Year Annual Research Report
化学合成生物群集における共生関係の進化についての分子古生物学的研究
Project/Area Number |
14540437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荻原 成騎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50214044)
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Keywords | バイオマーカー / 化学合成生物群集 / メタン生成古細菌 / 硫酸還元菌 / メタン湧出 / 冷湧水 |
Research Abstract |
メタンに代表される炭化水素を含む冷湧水は,メタンや硫化水素をエネルギー源とする細菌,古細菌と共生する底生の生物群集へエネルギーを提供している。これらの生物群集は,高い個体生息密度,化学合成細菌と共生した大型生物,光合成に依存しない生態系を特徴としている。本研究では、現世の海洋底のメタン湧出地点に生息するメタン生成菌、が硫酸還元菌と栄養共生してメタン酸化を行っている試料について分析を行い、バイオマーカーによる特徴付けを行った。メタン生成菌の化学組成分類であるANME-1の炭化水素画分からはクロセタンと飽和および不飽和PME,エーテル結合性脂質からはフィタンのみでビフィタンは検出されなかった。これに対して、ANME-2については,炭化水素画分から飽和および不飽和PMEのみでクロセタンを含まず,エーテル結合性脂質からはフィタンと3種のビフィタンが検出された。この後、北海道白亜系の5つの石灰岩、横浜市栄区の石灰岩(更新世)および稚内沖の炭酸塩クラスト(現世)についてバイオマーカー分析を行った。その結果、白亜系ではANME-1が卓越するが、特に下部白亜系においてはANME-1のみならずANME-2の共存が認められた。これに対して、横浜市栄区の石灰岩(更新世)では、ANME-2のみの活動が検出された。また、稚内沖の炭酸塩クラストでは、ANME-1が支配的であった。 さらにメタン湧出地点に観察される炭酸塩沈殿について、以下のような考察を行った。硫酸還元細菌とメタン生成古細菌の活動による嫌気的メタン酸化の結果であり、直接的には炭酸塩イオンで沈殿が促進されと共に、間隙水中では炭酸塩沈殿の妨害イオンである硫酸イオン濃度の低下とアルカリ度の上昇が生じるため、炭酸塩沈殿が生じている。
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