Research Abstract |
(1)四国三波川帯・別子地域に想定されている瀬場エクロジャイト・ナップ中に産する含クロリトイド泥質片岩の相平衡解析を行った.これらの岩石は,上昇・減圧時にほぼ完全に再結晶しており,それらがエクロジャイト相変成作用を被ったことを示す岩石学的・鉱物学的証拠は,これまでに報告されていなかった.しかし今回の研究により,これらの岩石が,累進エクロジャイト変成作用→減圧・加水再結晶作用→緑れん石-角閃岩相累進変成作用の変成履歴を持つことが明かとなった. (2)別子地域・筏津河床に産する含クロリトイド塩基性片岩の相平衡解析を行った.この岩石は,上記の瀬場エクロジャイト・ナップにみられる含クロリトイド泥質片岩と同一の鉱物共生を持つが,その形成圧力は0.9GPaと瀬場試料に比べて有意に低い.このことは,直線距離で約1km離れている瀬場エクロジャイト・ナップと筏津露頭の間に,約1GPaに達する変成圧力差が存在することを意味する.このことから,両地域間に,構造的不連続が存在し,それは,提案されているエクロジャイト・ナップ説を強く支持している. (3)別子地域・東部五良津岩体の現地調査と試料採集を行った,その際,珪灰石を含む大理石を見いだした.そして,相平衡解析を行った結果,変成作用時のCO_2分圧が極めて低かったことが明かとなり,この点について投稿原稿を作成中である.また,当岩体はエクロジャイト相変成作用以前にグラニュライト相変成作用を被り,他のエクロジャイト岩体とは異なる変成履歴を持つとされてきた.しかし,主要構成鉱物の化学組成および共存組織を再検討した結果,グラニュライト相の共生とされてきたものは,原岩に由来すると解釈でき,本岩体も他の岩体と共通の変成履歴を持つとみなしてもよいと結論された.
|