2002 Fiscal Year Annual Research Report
新しいトレーサーにより海洋底ペリドタイトからマントルの地球化学的不均質を検証する
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14540457
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
熊谷 英憲 海洋科学技術センター, 深海研究部, 研究員 (10344285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽生 毅 海洋科学技術センター, 固体地球統合フロンティア研究システム, 研究員 (50359197)
佐藤 佳子 海洋科学技術センター, 固体地球統合フロンティア研究システム, 研究員 (40359196)
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Keywords | ヘリウム存在度 / かんらん岩 / はんれい岩 / 低速拡大軸 / 元素分離プロトコル |
Research Abstract |
年度計画に基づき、酸分解・元素分離に関わる器具・試薬等の購入の後、設備装置の設置・稼働を待って、器具の洗浄、試薬の純化などを始めた。それ以外は、本年度は主として、希ガス同位体分析のための鉱物分離に終始したが、平行して、現在までに得られている希ガス組成データの解釈を進めた。これは、同一海域で比較的近距離より採取されたはんれい岩、ならびに対応する現在の海嶺拡大軸で採取の玄武岩ガラスと組み合わせた議論である。特に重要な知見としては、低速拡大軸における部分融解度の低い火成活動の後に残されるマントルかんらん岩には予想されたより1桁から2桁多い希ガスが含まれ、その推定される体積を考慮すると、地球内部の希ガスとくにヘリウムの分布に大きく寄与する可能性が示されたことである。玄武岩層自体の厚さは数百メートルに達するが希ガスを有効に保持するのは、個々の溶岩流もしくは枕状熔岩で体積比1%に満たない、きわめて薄い急冷ガラス層のみである。一方、部分融解に関与するマントルはその融解度から推定するに玄武岩、はんれい岩層の10倍程度の体積には達するので、すくなくとも同程度、おそらく10〜100倍程度の寄与に達すると考えられる。これら成果については電子ジャーナルである、Geochemistry, Geophysics, Geosystemsに投稿し、査読を受けている。 本研究の遂行上密接な関連を維持している当初は研究分担者であった西尾博士により、微量元素・リチウム同位体分析の技術的な確立がなされた。この結果については既にAnal. Chim. Acta誌にて公表されている。主要な点としては、元素分離に使用するイオン交換樹脂の使用量を極力抑えることにより、分析の際の環境およびプロトコロルのバックグラウンドと言うべきブランク量を抑えて分析の精度向上と迅速化が図られたことが挙げられる。 なお、鉱物分離作業は個々の試料の状態に強く依存し、残念ながら、当初見込みを超えた作業量が避けがたいことが明らかになりつつある。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Nishio, Y., Nakai, S-i.: "Accurate and precise lithium isotopic determinations of igneous rock samples using multi-collector inductively coupled plasma mass spectrometry"Anal. Chim. Acta. 456巻. 271-281 (2002)