2003 Fiscal Year Annual Research Report
全電子MO計算によるK^+漏洩チャネルタンパク質のイオン選択および透過機構の研究
Project/Area Number |
14540482
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) |
Principal Investigator |
北浦 和夫 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 総括研究員 (30132723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古明地 勇人 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 主任研究員 (30357032)
上林 正巳 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 主任研究員 (70356559)
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Keywords | タンパク質の量子化学計算 / チャネルタンパク質 / フラグメント分子軌道法 / カリウムイオンの透過 / 大規模系の電子状態計算 |
Research Abstract |
本研究課題は、K^+漏洩チャネルタンパク質のフラグメント分子軌道(FMO)法による全電子量子化学計算を行い、チャネルタンパク質によるイオン選択とイオン透過機構を電子状態レベルで明らかにすることを目的とする。H14年度に引き続きFMO7法とプログラムの改良を行い、本年度はカリウムイオン漏洩チャネルタンパク質全系のFMO-HF/STO-3G計算に成功した。方法論の改良としては、3体展開FMO法を開発して誤差(通常のab initio MO計算の結果との差)を小さくするとともに(全エネルギーの誤差は数kcal/mol程度)、密度汎関数法のFMO法(FMO-DFT)を開発して電子相関を考慮した高精度計算を可能にした。 チャネルは97アミノ酸残基(1,477原子)からなるタンパク質の4量体で構成され、ほぼC4対称性を持つ。計算は、PDB:1BL8を元に構造モデルを作成し、タンパク質4量体とチャネル内に3個のカリウムイオンと1個の水分子を配置した系で行った。全系の原子数は5,902で、通常のab initio MO法では基底関数の数が17,590となる。このような大規模分子系のab initioクオリティの電子状態計算はこれまでに例がなく、本計算が世界最大規模となる。計算時間(CPU時間)は、Pentium4(3GHz)のパソコン10台による並列計算で、13時間12分であった。使用したプログラムは、私たちが開発したFMO法プログラムをGAMESSに組み込んだもので、このプログラムは本年5月に公開される予定である。 計算結果は、チャネル内のK^+の電荷が、主にthr75とtyr78から電荷移動により、3個のイオンそれぞれで、+0.54、+0.61、+0.54となっており、これらのイオン間の静電反発が大巾に緩和されていることを示している。また、チャネル内にK^+がない系との比較から、K^+による分極で、thr75とtyr78の主鎖カルボニル酸素に、それぞれ-0.09と-0.04の電荷が誘起され、K^+との安定化相互作用を増大させることが分かった。K^+との安定化相互作用としては、イオンから6-7Åにあるアニオン性残基(glu71とasp80)の寄与が最も大きい(20〜60kcal/mol)が、3Å付近にあるこれらの残基(thr75とtyr78)も、大きなところでは約20kcal/molの寄与がある。電子状態計算により、タンパク質の分極と電荷移動により、K^+がチャネル内で安定化される仕組みが明らかになった。詳細は論文で報告する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Dmitri G.Fedorov, Kazuo Kitaura: "The importance of three-body terms in the fragment molecular orbital method"Journal of Chemical Physics. 120. 6832-6840 (2004)
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[Publications] Dmitri G.Fedorov, Kazuo Kitaura: "A new hierarchical parallelization scheme : generalized distributed data interface (GDDI), and an application to the fragment molecular orbital method (FMO)"Journal of Computational Chemistry. 25. 872-880 (2004)
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[Publications] Dmitri G.Fedorov, Kazuo Kitaura: "On the accuracy of the 3-body fragment molecular orbital method (FMO) applied to density functional theory"Chemical Physics Letters. in press.