2002 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子素子をめざした電気化学的スイッチング機能を有する有機酸化還元系の構築
Project/Area Number |
14540486
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊東 俊司 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10213042)
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Keywords | 単一分子素子 / 分子スイッチ / 有機酸化還元系 / エレクトロクロミズム / ディスコティック液晶 / クロスカップリング反応 / π電子系化合物 / 非ベンゼン系芳香族化学 |
Research Abstract |
分子素子構築の研究は、単一分子を用いた分子エレクトロニクスの領域に発展を遂げようとしている。しかしながら、これまでのシステムでは、情報の伝達が、1電子の授受を介して行なわれてきた。その結果、生成するラジカルイオン状態の安定性に大きな問題が残っていた。その問題の解決に、2電子の電子移動を伴う閉殻系の適応を試みた。 酸化還元系の構築に用いる酸化還元を担う置換基として、これまでの我々の研究でπ共役系に大きな分極を誘起することが明らかにされてきたアズレン環を用いた。酸化還元を担うアズレン環をπ共役系に複数個配置することで、2電子ずつの電子移動を可能にするシステムの構築を行った。実際にアズレン環の5員環部のエチニル化とそれに引き続くエチニルアズレン類のDiels-Alder反応、遷移金属触媒を用いたアズレニル金属試薬との反応、およびエチニル化合物とアズレン類の薗頭反応により、π共役系であるベンゼン環に複数のアズレン環を置換、縮環、およびスペーサーを介して配置したシステムの構築を行った。生成した新規なπ共役系化合物の多価イオン状態は、CV法により検討を加えた。また、エレクトロクロミズムについては、スペクトロエレクトログラムにより検討を加えた。その結果、期待したようにπ共役系に複数個のアズレン環を配置することで、大きな色調の変化を伴った熱力学的に高度に安定化された2電子ずつの多電子の酸化還元系が構築できることが明らかになった。さらに、アズレン環上の置換基の選択により、酸化還元的挙動と共にディスコティック液晶相合わせ持つ新たな機能を有するπ共役系の開発にも成功した。以上の結果は、このような2電子ずつの電子移動に基づく有機酸化還元系の構築が、実用化に向けた高度に安定化された分子素子としての応用への有効性を示している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 伊東俊司: "Preparation and Stille Cross-Coupling Reaction of the First Organotin Reagents of Azulenes. Easy Access to Poly(6-azulenyl)benzene Derivatives"Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1. 16号. 1896-1905 (2002)
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[Publications] 伊東俊司: "Synthesis and Two-Electron Redox Behavior of Diazuleno[2,1-a:1,2-c]naphthalenes"The Journal of Organic Chemistry. 67・21. 7295-7302 (2002)
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[Publications] 伊東俊司: "Synthesis of Poly(6-azulenylethynyl)benzene Derivatives as a Multi-Electron Redox System with Liquid Crystalline Behavior"Journal of the American Chemical Society. 125・6. 1669-1680 (2003)