2002 Fiscal Year Annual Research Report
メスバウアー分光法による固液共存系での表面化学種選択的状態分析法の開発
Project/Area Number |
14540511
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
久保 謙哉 国際基督教大学, 教養学部, 助教授 (60214988)
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Keywords | メスバウアー分光法 / 陽イオン交換樹脂 / 固液共存系 / 水素イオン濃度 / 鉄イオン / 吸着平衡 / 無反跳分率 / 表面選択的 |
Research Abstract |
メスバウアー分光法は、他の分光法と異なり固体状態のものにのみ感度をもつ。この特性を利用して液体と固体が共存する系において、溶液と固体表面吸着の間に平衡が存在するような化学種の固体表面吸着側のみの状態分析が可能であると考えられる。しかしこのような試みは実際上行われていない。本研究では、吸着平衡系として水溶液と陽イオン交換樹脂表面を選択し、鉄化合物が水溶液として存在する際の共存するイオン交換樹脂表面上での鉄化学種のキャラクタリゼーションを試みた。強酸性陽イオン交換樹脂としてAG50W8を、弱酸性陽イオン交換樹脂としてBio-Rex70を使用した。 まず塩酸系での鉄イオンの陽イオン交換樹脂への吸着平衡のpH依存性を^<59>Feトレーサを用いて調べ、Fe(II)ではpH2以上で、Fe(III)はpH0.4以上でFeはイオン交換樹脂に90%以上が吸着していることを確認した。Fe(II)ではpH2.7〜4.2、Fe(III)ではpH1.1〜3.8の範囲でメスバウアースペクトルを測定した。強酸性イオン交換樹脂に対しては、pH4.0でのFe(II)、pH1.1のFe(III)いずれもメスバウアースペクトルに明瞭な吸収は見られなかったのに対して、弱酸性イオン交換樹脂では、pH4.2のFe(II)、pH2.7とpH3.8のFe(III)はいずれも一組のダブレットピークを示した。一般にアルカリ元素やアルカリ土類元素のイオン半径に対する樹脂の選択性から、強酸性陽イオン交換樹脂および弱酸性陽イオン交換樹脂とは、それぞれ水和イオンおよび裸のイオンが相互作用すると言われている。今回得られたメスバウアー吸収強度の大きな違いは、この吸着イオン種の第一配位圏の樹脂による相違によりメスバウアー無反跳分率に大きな違いが現れたものと考えられ、固液共存系での表面吸着種の状態分析にメスバウアー分光法が非常に有力であることを示すことができた。
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