2002 Fiscal Year Annual Research Report
π-d相互作用制御を指向した磁性分子導体の開発とその物性
Project/Area Number |
14540530
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 章 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40251607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎 敏明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10113424)
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Keywords | 有機磁性伝導体 / π-d相互作用 / 分子磁性体 / 反強磁性 / 弱強磁性 / 一軸性異方性 / TTP系ドナー / Reinecke塩 |
Research Abstract |
本年度は以下のπ-d相互作用に基づく有機磁性伝導体の構造および物性について研究を行った。 1.TTP系ドナーBDH-TTP、DTDH-TTPおよびBDA-TTPと、Reinecke塩型錯体Cr(isoq)_2(NCS)_4(isoq=isoquinoline)の構造と磁性の相関について検討した。これらの塩は用いたドナー分子によらず同一構造をとる。すなわち、有機ドナー分子と金属錯体アニオンとの間の非常に近い分子間S...S接触により一次元交互鎖が形成されており、鎖間にはドナー分子間のS...S接触およびアニオン配位子間のπ...π重なりがみられ、全体として二次元シート構造をとっている。単結晶を用いた磁化測定の結果から、低温においてこれらの物質はシートに垂直方向に自発磁化を有する弱強磁性体であることが明らかになった。結晶構造との対比から、弱強磁性発現の機構として、Cr(isoq)_2(NCS)_4の配位子場に基づく一軸性磁気異方性により鎖内では分子軸方向へスピンが揃うフェリ構造を有し、かつ隣接した鎖間でこの分子軸が平行ではないことから鎖間反強磁性的相互作用によっても磁化が完全には相殺されず、自発磁化を持つに至ったと考えられる。これらの物質を比較すると転移温度がDTDH-TTP>BDH-TTP>BDA-TTPの順に低くなっていくが、この傾向は鎖間のS...S距離およびドナー分子の最高被占有軌道の形から説明することができる。 2.新規のπ-d相互作用に基づく分子磁性伝導体の開発の一端として、分子両端に電導性向上部位のエチレンジオキシ基、および対イオンとの相互作用を担うメチレンジチオ基を有するドナーEOMT-TTFを合成した。合成法の改良により、既報の方法では低収率でしか得られなかった本分子を実用的なスケールで合成することが可能になった。現在錯体の合成条件の検討を行っている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] A.Miyazaki et al.: "Conducting Molecular Magnets based on TTF-Derivatives"J. Solid State Chem.. 168(2). 547-562 (2002)
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[Publications] F.Setifi et al.: "Bulk Weak Ferromagnet in Ferrimagnetic Chains of Organic-Inorganic Hybrid Materials Based on BDH-TTP and Paramagnetic Thiocyanato Complex Anions : (BDH-TTP)[M(isoq)_2(NCS)_4]"Inorg. Chem.. 41(14). 3786-3790 (2002)
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[Publications] F.Setifi et al.: "New Tetrathiapentalene-derived Charge Transfer Salts with Paramagnetic Transition Metal Complex Anion : κ-(EDDH-TTP)_3[Cr(phen)(NCS)_4].2CH_2Cl_2 and κ_<21>-(BDH-TTP)_5[Cr(phen)(NCS)_4]_2.2CH_2Cl_2"Inorg. Chem.. 41(14). 3761-3768 (2002)
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[Publications] A.Miyazaki et al.: "Crystal Structure and Physical Properties of (EDS-TTF)_2FeBr_4"Synth. Metals. 133-134. 543-545 (2003)
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[Publications] F.Setifi et al.: "New Bulk Weak Ferromagnet in Ferrimagnetic Chains of Molecular Material based on DTDH-TTP and Paramagnetic Thiocyanato Complex Anion : (DTDH-TTP)[Cr(isoq)_2(NCS)_4]"C. R. Chimie. 6(In press). (2003)
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[Publications] A.Miyazaki et al.: "π-d Interaction-based Molecular Magnets"Polyhedron. (In press). (2003)