2004 Fiscal Year Annual Research Report
π-d相互作用制御を指向した磁性分子導体の開発とその物性
Project/Area Number |
14540530
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 章 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40251607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎 敏明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10113424)
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Keywords | 有機磁性伝導体 / π-d相互作用 / 反強磁性 / 電子スピン共鳴 / 磁気輸送現象 / 分子磁性体 / 弱強磁性 / TTP系ドナー |
Research Abstract |
本年度は以下のπ-d相互作用に基づく有機磁性伝導体の構造および物性について研究を行った。 1.ハロゲン置換基を持つドナーを用いたπ-d相互作用系(EDO-TTFBr_2)_2FeCl_4の物性を詳細に検討した。室温のESRスペクトルではπ電子系と4電子系に由来するシグナルが分離されて観測されたが、温度低下とともにこれらのシグナルは融合した。解釈として(i)室温では有意な大きさを持たないπ-d相互作用が、格子の熱収縮により強くなる、(ii)室温では格子系へのエネルギー緩和が支配的であるが、低温では格子への熱緩和過程が抑えられるためπ-d間の交換相互作用が支配的になる、の二つの可能性がある。一方高圧下磁気抵抗測定の結果では、磁場を磁化容易軸方向に印加したときに磁気抵抗に二段階の不連続な上昇が見出された。これはπ電子系とd電子系それぞれのスピンフロップ転移に相当している。ゼロ磁場下ではフラストレートした磁気構造によりπ電子系のSDW状態が乱れているが、まずπ電子系がスピンフロップすることでフラストレーションの影響がなくなりSDW状態が長距離に成長し、さらにd電子系がスピンフロップするとこのSDW状態がπ-d相互作用により安定化することでいずれも抵抗が上昇すると解釈できる。 2.TTP系ドナーDHDA-TTPと、Reinecke塩型錯体Cr(isoq)_2(NCS)_4(isoq=isoquinoline)の磁性について検討した。本ドナー分子は対称ドナー分子BDH-TTPとBDA-TTPのハイブリッドであり、弱強磁性転移点は二つの対称塩の中間の値である6.7Kを示している。DHDA-TTP塩の残留磁化が対称ドナー塩の1/5以下と小さい値であることはドナー分子の非対称性による乱れの効果とも考えられるが、保磁力が対称塩の二倍程度大きいことはこれとは矛盾する結果であり興味深い。
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Research Products
(6 results)