2005 Fiscal Year Annual Research Report
π-d相互作用を指向した磁性分子導体の開発とその物性
Project/Area Number |
14540530
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 章 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40251607)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎 敏明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10113424)
|
Keywords | 分子伝導体 / 分子磁性体 / π-d相互作用 / 高圧化磁性 / 弱強磁性 / 傾角スピン構造 / 単一イオン異方性 / Dzyaloshinski-Moriya相互作用 |
Research Abstract |
本年度はこれまで得られたπ-d相互作用に基づく有機磁性伝導体のうち、TTP系ドナーBDH-TTPとReinecke塩型錯体[M(isoq)_2(NCS)_4](M=Cr,Fe ; isoq=isoquinoline)とからなる分子性弱強磁性体の圧力下の磁性について詳細に検討した。圧力印加に従い、Cr塩・Fe塩とも転移温度は上昇するが、特にCr塩の磁気転移温度の圧力依存性は既知の磁性体のなかでも最も大きい部類に属している。また残留磁化の温度T=0への外挿値は、Cr塩では圧力上昇とともに単調に減少していくのに対し、Fe塩では有意な圧力依存性は観察されなかった。これらの物質における残留磁化の大きさはスピン傾角により決定されるが、これは局在スピン間の反対称相互作用と反強磁性相互作用の比として見積もることができる。Cr塩では反対称相互作用の起源は[M(isoq)_2(NCS)_4]錯体の単一イオン異方性軸が隣接する分子間で異なっていることにあり、単一イオン異方性パラメータDの圧力依存性は分子間相互作用である反強磁性相互作用Jのそれと比較して小さいため、スピン傾角は減少していく。一方Fe塩では反対称相互作用の起源はDzyaloshinski-Moriya相互作用であり、この大きさは反強磁性相互作用Jとほぼ比例するため、スピン傾角の圧力依存性は比較的小さい。さらに単結晶試料を用いた磁性の詳細な圧力依存性が得られたCr塩について、平均場近似に基づき分子間交換相互作用の圧力依存性を見積もった。本物質中にはπ電子系であるBDH-TTPと、d電子系である[M(isoq)_2(NCS)_4]との間に三種類の交換相互作用Jππ、Jπd、Jddが存在するが、d電子系間の交換相互作用Jddの圧力依存性がもっとも大きい。これは分子間S...S接触の温度変化が、[M(isoq)_2(NCS)_4]のNCS配位子間においてもっとも顕著であることと対応している。
|
Research Products
(6 results)