2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540531
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡村 恵美子 京都大学, 化学研究所, 助手 (00160705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480)
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Keywords | リン脂質二分子膜 / 内分泌撹乱物質 / 膜輸送 / NMR / ビスフェノールA / 拡散 / オクチルフェノール |
Research Abstract |
本研究では、これまでに研究例のない、リン脂質二分子膜中に取り込まれた内分泌撹乱物質の輸送過程を、NMRを通して明らかにした。内分泌撹乱物質として、ビスフェノールAと4-オクチルフェノールを取り上げ、まず、両者の飽和水溶液中における自己拡散係数を、パルス磁場勾配NMR法により直接決定した。濃度はビスフェノールAで数百μM、オクチルフェノールで数十μMであり、サブミリモル以下の希薄溶液においても、NMRによる信頼性の高い動態の解析が可能であることを示した。次に、両者をリン脂質リポソームに取り込ませ、取り込まれた撹乱物質の輸送過程をパルス磁場勾配NMR法により明らかにした。さらに、そのときの膜側の動きを同時に観測することにも成功した。この成果は、「リン脂質二分子膜」という特殊な環境の中において、分子の揺らぎや動きをそのままの状態で高感度かつ高分解能で観測するために開発された、世界最大級の磁場勾配の発生をともなう拡散測定用NMRプローブを600MHzNMR装置に組み合わせることによって、初めて達成されたものである。 ビスフェノールA、オクチルフェノールを、生体膜に最も近いモデルといわれている粒子径100nmのリン脂質一枚膜リポソームに取り込ませた。すると、これらの物質の移動は、いずれも水中に比べて約1/50に制限された。しかも、輸送の速さは、媒質である膜の揺らぎと正確に同期していた。また、NMR化学シフトから撹乱物質の膜内分布を求めたところ、いずれも二分子膜の表面に近い部位に選択的に分布する特徴を有することが明らかになった。これに対して、ベンゼンのように、膜の表面から疎水性内部まで幅広く取り込まれる分子の場合には、上で述べたような膜の揺らぎに支配された輸送は観測されなかった。以上より、内分泌撹乱物質は二分子膜の表面に強く結合し、膜分子の揺らぎに同期して輸送されるという動態の特性が明らかにされた。
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