2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール磁性体の磁気的性質に関する熱力学的研究
Project/Area Number |
14540534
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮崎 裕司 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70252575)
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Keywords | ナノスケール磁性体 / 超常磁性 / 磁気量子トンネリング / 単分子磁性体 / 熱容量 / 強磁性相転移 / 磁気エントロピー |
Research Abstract |
バルク状態の磁性物質をnmスケールまで微小化することによって得られるナノスケール磁性体は,新しい磁気メモリーというような応用の面ばかりでなく,超常磁性や磁気量子トンネリングなどの興味深い現象を示すことで近年世界中で注目を集めている。今年度も昨年度に引き続き,ボトムアップ方式ナノスケール磁性体である単分子磁性体[Mn_<12>O_<12>(O_2CPh)_<16>(H_2O)_4]およびトップダウン方式ナノスケール磁性体であるアモルファスSiO_2中のNi(OH)_2モノレイヤーナノクラスター(Ni-MNC)の磁気的性質を熱力学的立場から調べた。 緩和法により測定した[Mn_<12>O_<12>(O_2CPh)_<16>(H_2O)_4]粉末結晶および磁化容易軸に平行および垂直に磁場をかけた単結晶の熱容量データを一軸性異方性のみをもつS=10のスピンハミルトニアンで解析したところ,10K以下では粉末結晶および磁化容易軸に平行に磁場をかけた単結晶の熱容量データをうまく再現できた。一方,磁化容易軸に垂直に磁場をかけた単結晶の熱容量データについては,結晶の垂直からのずれを考慮するとうまく再現できた。10K以上では何れの熱容量データも理論値とあまり一致しない結果が得られた。 今回,断熱法および緩和方によるNi-MNCの熱容量の再測定を行い,双方の熱容量データが非常によく一致する結果が得られた。零磁場下での熱容量では,20K付近に強磁性相転移と思われるカスプを伴うブロードな熱異常が観測された。また,磁気熱異常の磁場依存性から,Ni-MNC内およびNi-MNC間に強磁性相互作用が働いていることが示唆された。磁気エントロピーは8.68JK^<-1>mol^<-1>となり,S=1スピン系の予想値Rln3(=9.13JK^<-1>mol^<-1>)とよく一致したことから,観測された磁気熱異常はNi^<2+>(S=1)の磁気秩序化によるものであることが結論された。
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Research Products
(5 results)