2002 Fiscal Year Annual Research Report
動脈壁構築蛋白質の自己組織化と機能:原始細胞型材料と生体弾性機能材料としての展開
Project/Area Number |
14540537
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐原 梢 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (90080564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 浩義 久留米大学, 医学部, 講師 (10213175)
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Keywords | 弾性線維蛋白質 / 細胞外マトリックス / 動脈硬化 / 自己集合組織化 / コアセルベーション / 選択性イオン結合部位 / 生体弾性機能材料 / 原始細胞モデル |
Research Abstract |
●弾性線維蛋白質-水系の温度依存性コアセルベーション:生体由来α-エラスチンとモデルポリペプチド 低温で均一なウシ項靱帯由来α-エラスチン或いはポリペンタモデルペプチド(VPGVG)_n水溶液では、温度上昇に伴いミクロ液滴が平衡液相から分離する、コアセルベーションと呼ばれる現象が観察される。細胞外間隙で弾性線維蛋白質が前駆蛋白質から生合成される過程のキーステップは、この温度依存性コアセルベーションと等価な生体内自己組織化である。従って、弾性線維蛋白質の生理的機能発現や病理的変化の要因について、温度依存性コアセルベーションの詳細な解析により、有用な知見が得られる。α-エラスチンとモデルペプチドは、各々、多様な細胞外マトリックス機能に対応する試料、最も重要な弾性機能とコアセルベート特性に対応する試料として用いるが、荷電の有無を利用して、金属イオンとの相互作用の検証にも有利である。両者共に、下部臨界共溶温度型相図により特徴付けられ、共存イオンの効果は、特に無荷電のモデルペプチド系では本質的に顕著ではない。 ●弾性線維蛋白質の自己集合特性と生体弾性機能性材料への展開:金属イオン選択性結合部位と自己集合特性 荷電を有する生体由来α-エラスチン、荷電を持たないポリペンタペプチド共に、カルシュウムイオンと特異な相互作用を示す事は、生理学的及び病理学的な生体内現象と良く対応する。動脈硬化が進行した血管壁では、カルシュウム沈着や石灰化が認められるが、動物を用いた実験的動脈硬化の実験でも、カルシュウム濃度増加は弾性弾性線維蛋白質に局在する事を示す結果を得ている。弾性線維蛋白質上のカルシュウム結合部位については、荷電性部位との一般的な考え方では、選択的結合機構の説明は困難である。カルシュウム結合部位は電気的中性部位とのモデルを最初に提案したのは、何度か議論する機会も得た米国のD.W.Urryである。電気的中性部位、則ちペプチド骨格カルボニル酸素へのカルシュウム結合の詳細を明らかにする事は、生体弾性発現機構解明と同時に、新規生体弾性材料創製への展開の要点の一つであり、高齢化社会での循環器疾患治療への一助ともなると考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 井上 浩義, 甲斐原 梢: "中学生を対象とした科学技術体験活動「放射線を知っていますか」"Isotope News. 32-34 (2002)
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[Publications] K.Kaibara, T.Ogawa, H.Kawasaki, M.Suzuki, H.Maeda: "Hydrogen Ion Titration of Oleic Acid in Aqueous Media : Further Examinations on Sodium and Potassium Oleate Systems"Colloid and Polymer Science. (Published online). (2003)
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[Publications] K.Kaibara, T.Watanebe, K.Miyakawa, K.Okamoto: "Selective Metal Cation Binding of Elastomeric Proteins : Two Types of Binding Sites and Elastomeric Functions"Journal of Ion Exchange. (印刷中). (2003)
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[Publications] K.Kaibara, K.Okamoto, K.Miyakawa: "Characterization of Proteinic Coacervate Formation : From Primeval Cell Model to Biofunctionality Materials, In : Handbook of Polyelectrolytes and Their Applications"American Scientific Publishers, Editors : S.Tripathy, J.Kumar, and H.S.Nalwa. 1200(52) (2002)