2002 Fiscal Year Annual Research Report
キラル非対称な化合物の鏡像異性体の一方のみを定常的に生成し続ける開放化学系の開発
Project/Area Number |
14540548
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
朝倉 浩一 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30222574)
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Keywords | キラル対称性の破れ / キラル自触媒系 / 結晶成長フロント / 1,1'-ビナフチル / 光学純度 / 不斉増幅 / 速度論解析 / PDB |
Research Abstract |
本年度は、1)1,1'-ビナフチルの過冷却融液中からの結晶化における自発的キラリティーの発現 2)不斉アミノアルコールを触媒補助剤としたベンズアルデヒドと有機亜鉛による不斉アルコールの合成反応における不斉増幅現象 についてそれぞれ検討を行った。 1)は、1,1'-ビナフチルの過冷却融液中から生成された多結晶体が、自発的に鏡像異性体のどちらかで独占される現象であるが、その結晶化の際の温度測定を行ない、結晶化前の融液表面の温度が均一な状態であるならば、生成する多結晶体の光学純度の絶対値のばらつきは小さくなることが認められた。Kondepudi及びNelsonにより提唱されたキラル対称性の破れのモデル(D.K.Kondepudi, G.W.Nelson, Nature, 1985, 314, 438)に本現象を当てはめると、自発的なキラリティーの発現は、結晶成長フロントというキラル自触媒的に結晶化が進行する開放系におけるキラル対称性の破れとみなすことが可能であった。また、結晶化の際の潜熱の発生による温度変化はかなり大きく、最初の核生成とその後の多結晶体としての成長は異なった温度で進行することを見出した。 2)は、反応に用いる触媒補助剤の光学純度よりも、生成物の光学純度の方が高くなる現象であるが、Oguniらにより報告されたPDBを触媒補助剤とした反応系(N.Oguni, et al., J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 7877)について速度論解析を行った。その結果、触媒補助剤と有機亜鉛を反応系に加える順序を逆とすることで、反応速度が大きく異なることが認められた。またこの順序は、反応により生成される不斉アルコールの光学純度にも、大きな影響を与えることが見い出された。
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Research Products
(1 results)