2002 Fiscal Year Annual Research Report
ラン藻の低温および浸透圧センサーのストレス検知機構のゲノム科学的研究
Project/Area Number |
14540606
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
三上 浩司 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (40222319)
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Keywords | 環境ストレス / 低温センサー / 浸透圧センサー / ヒスチジン・キナーゼ / ストレス検知 / DNAミクロアレー / 多機能性センサー / ラン藻 Synechocystis sp. PCC 6803 |
Research Abstract |
ラン藻Synechocystis sp. PCC6803(以下、ラン藻)の膜結合性ヒスチジン・キナーゼHik33は、浸透圧ストレスや低温を検知する多機能ストレスセンサーである。本研究では、Hik33が制御するストレス誘導遺伝子の解析、およびHik33のストレス検知ドメインの同定を目的に解析を行った。 1)Hik33が制御する浸透圧ストレスおよび低温ストレス誘導遺伝子の網羅的解析 ラン藻の正常細胞とHik33遺伝子が不活性化された変異細胞を浸透圧ストレスや低温で処理し、各ストレスで誘導される遺伝子群の質的及び量的な変動をDNAミクロアレイ法により比較した。その結果、正常細胞では257の浸透圧誘導遺伝子と45の低温誘導性遺伝子が見い出されたが、Hik33はこれらのうち210浸透圧誘導遺伝子と17の低温誘導性遺伝子の発現に関わっていることが明かとなった。さらに、全く予想外であったが、Hik33が制御する浸透圧ストレスおよび低温ストレス誘導遺伝子は、少数のものを除き大部分が異なるものであった。これらの知見より、Hik33は浸透圧ストレスや低温を異なるストレスとして検知し、それらのストレスに特異的な細胞内シグナル伝達経路を活性化すると考えられた。 2)Hik33のストレス検知ドメインの同定 Hik33がどのように浸透圧ストレスと低温を区別して検知するのかを明かにする目的で、Hik33のストレス検知ドメインをドメイン・スワップ法で同定する。本年度ではその準備として、Hik33および浸透圧ストレスや低温の検知に関わらないHik31の膜貫通領域と細胞外領域を含むN末端側領域をそれぞれ4つのドメインに分割し、両者間で対応するドメインの入れ替えを行った10の異なる変異遺伝子を構築した。また、ストレス検知ドメインの同定にはそれらを個別にラン藻のゲノムに導入した変異細胞株を作出することが必要であるが、現在までに5つの変異遺伝子についてそれが完了している。今後は、それらをラン藻のゲノムに導入し、各変異ドメインの機能をDNAミクロアレイ法による遺伝子発現パターンの網羅的解析により明らかしていく。
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Research Products
(1 results)