2002 Fiscal Year Annual Research Report
板鰓類の腎臓における尿素再吸収モデルの構築:輸送体分子の網羅的解析から
Project/Area Number |
14540609
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兵藤 晋 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40222244)
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Keywords | 板鰓類 / 尿素再吸収 / 腎臓 / 体液調節 / 輸送体 / 水チャネル / 下垂体神経葉ホルモン / バソトシン |
Research Abstract |
海産の板鰓類は尿素を体内に蓄積することで体液の浸透圧を海水レベルに上昇させ、海という高浸透圧環境でも脱水から免れるという、ユニークな体液調節を行う。そのため、腎臓では濾過されてしまう尿素のほとんどを再吸収して、高い尿素濃度を維持している。本研究では、再吸収に関わる輸送体分子を分子機能形態学的に同定し、再吸収機構を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の3項目について研究を進めた。 1.尿素輸送体の局在:すでに同定した腎臓特異的尿素輸送体が、細尿管の最終分節である集合細管のみに存在することを明らかにした。上皮細胞の頂端部・基底部の両側に存在し、一次輸送を担うNa^+, K^+-ATPaseは集合細管には存在しない。したがって、集合細管が尿素再吸収の場であり、他の分節により形成される駆動力(尿素の濃度勾配あるいは浸透圧勾配)を利用して体内に尿素を取り込むことが示唆された。 2.水チャネルの同定:水チャネルは尿素輸送の駆動力形成に重要だと考えている。ドチザメ腎臓よりクローニングを試み、アクアポリン-3に相同な2つの分子を同定した。それぞれに特異的な抗体をすでに作成しており、今後その局在を調べる予定である。 3.下垂体神経葉ホルモンの同定と発現の解析:腎機能を調節するホルモンの候補として、神経葉ホルモンをドチザメ視床下部から同定した。バソトシン、アスバトシンに加え、ファジトシンという新規ペプチドを得た。これらの合成が低浸透圧あるいは高浸透圧環境でどのように変動するかを調べたところ、高浸透圧環境でバソトシンmRNA量が有意に上昇しており、腎機能の調節に関与することが示唆された。
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Research Products
(1 results)