2004 Fiscal Year Annual Research Report
板鰓類の腎臓における尿素再吸収モデルの構築:輸送体分子の網羅的解析から
Project/Area Number |
14540609
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兵藤 晋 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40222244)
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Keywords | 板鰓類 / 体液調節 / 尿素再吸収 / ギンザメ / 広塩性 / 腎臓 / バソトシン / 直腸腺 |
Research Abstract |
海産の板鰓類は尿素を体内に蓄積することで体液の浸透圧を海水レベルに上昇させ、海という高浸透圧環境でも脱水かち免れるという、ユニークな体液調節を行う。昨年度までに、尿素輸送体の局在をもとに尿素再吸収モデルを提唱し、下垂体神経葉ホルモンであるバソトシンがその腎機能を調節することを示唆する結果を得た。 今年度はまず、尿素再吸収モデルをより確かなものとするために、水チャネルのクローニングを進め、哺乳類の3型と相同性の高い2種類のチャネル分子を得た。3型チャネルは水だけでなく尿素を同時に通す可能性があり、2種類の分子が得られたのはサメがはじめてである。現在機能解析を進めており、腎機能との関わりが注目される。これまでは海産のドチザメをモデルとして研究を進めてきたが、淡水と海水の間を行き来する広塩性魚であるオオメジロザメと、全頭類のゾウギンザメについても研究を開始した。オオメジロザメを淡水から海水に移行させると、バソトシンの血中レベルが一過的に上昇した。これはドチザメでの結果と一致し、バソトシンが腎機能、特に高浸透圧環境への移行に伴う尿素再吸収や抗利尿作用に重要であることを示唆する。今後、海水および淡水環境での輸送分子の働きを腎臓で調べていく。全頭類は軟骨魚類のなかでも原始的なグループであり、尿素を用いる体液調節の進化を理解するために注目した。血中には板鰓類と同等の尿素を持ち、環境浸透圧の変化に対してやはり尿素を増減させて体液浸透圧を保つことがわかった。ただし、腎臓での尿素再吸収能は板鰓類よりも低いようである。また、独立した直腸腺を持たず、直腸の筋層内部に管状の組織が埋まっていた。直腸腺の原型と考えられ、体液調節の進化を明らかにする上で貴重なモデルとなることが証明された。
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Research Products
(6 results)