2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14540613
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
溝口 明 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60183109)
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Keywords | カイコ / 前胸腺刺激ホルモン / 変態 / 前胸腺 / エクジステロイド |
Research Abstract |
1.昆虫の終齢幼虫の蛹への変態の開始は前胸腺刺激ホルモン(PTTH)の血中濃度の急上昇(サージ)により指令されると考えられているが、このPTTHサージの時期を決定する機構は分かっていない。カイコの血中PTTH濃度とエクジステロイド濃度の発育変動を詳細に調べ比較したところ、PTTHサージの前日に僅かだが有意な血中エクジステロイド濃度の上昇が認められた。そこで、脳のPTTH分泌活性の調節にはエクジステロイドが関与するとの仮説を立て、20ヒドロキシエクジソン(20E)がPTTH分泌に及ぼす効果を系統的に調べた。予定PTTHサージの二日前に微量の20Eを注射したところ、翌日、早発PTTHサージが生じた。この結果は、血中エクジステロイドの僅かな上昇が脳を刺激し、PTTH分泌活性を急速に高めることを示唆する。予定PTTHサージ三日前の20E注射は翌日の血中PTTH濃度を僅かに上昇させ、更に一日前の注射は効果がなかった。 2.PTTHサージ期の脳-アラタ体系におけるPTTHの動態を調べた結果、脳内での合成、アラタ体への移動、アラタ体からの放出の何れもが昂進していることが示唆された。 3.終齢初期幼虫の血中に低濃度で存在するPTTHの前胸腺に対する作用を調べるためには、前胸腺の長期in vitro培養系を確立する必要がある。培養法の改良を重ねた結果、5齢脱皮直後に取り出し数日間培養した前胸腺にエクジステロイドを分泌させることに成功した。現在、微量PTTHが前胸腺の活性化に及ぼす効果を調査中である。 4.絶食は5齢初期幼虫のPTTH分泌を抑制し、再摂食は分泌を促進する。摂食によるPTTH分泌促進を仲介する因子を明らかにする目的で、絶食幼虫に対するグルコース注射や腸内へのアガロースゲル注入の効果を調べた。しかし、これらの処理は血中PTTH濃度を上昇させなかった。摂食に起因する血中グルコース濃度の上昇や腸の伸張はPTTHの分泌刺激には関与しないと考えられる。
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Research Products
(1 results)