2002 Fiscal Year Annual Research Report
ソテツの精子放出機構の解明と造卵器から分泌されれ精子誘引物質の同定
Project/Area Number |
14540616
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高相 徳志郎 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50295341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 徹郎 奈良女子大学, 理学部, 教授 (20174120)
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Keywords | 受精 / 精子 / 造卵器 / ソテツ / 裸子植物 |
Research Abstract |
ソテツの生殖過程を胞子体、配偶体との関係から研究し、以下の結果を得た。受粉期に観察される珠心(胞子体)によって分泌されると考えられる受粉滴は花粉(雄性配偶体)を捕らえるが、花粉が存在する、という情報は伝わらない。または、その情報に対して胞子体は反応しない。一方、受粉期が終了すると、花粉からこの情報は発せられると考えられる、花粉の存在、形質などの情報を評価し、その情報を雌性配偶体に伝える、という胞子体、雄性配偶体を中心とした生殖過程が見られる。このような相互作用は、被子植物の花柱、花粉管での現象に類似している。 ソテツの受精では、精子放出や頸の開放、受精液の分泌に関する細かいタイミングの調整といった、シダ植物と被子植物には見られない現象がある。シダ植物では精子の存在にかかわらず、卵細胞は精子を誘導し、被子植物では好機に受粉できた花粉が胚珠に到達する。ソテツでは胚珠という閉じた空間の中で全ての過程を進めなくてはならないため、被子植物以上に複雑な調整が必要の様である。 現在の研究はまだ現象の観察、認識のレベルにとどまり、またまだ解明できない事象も多い。その因果関係をはっきりさせるべく、より正確な情報設定のもと、研究を続ける必要がある。例えば、不稔現象について、受粉条件をもっと厳密に制御できれば、その要因の解明に役立つ。また、進化学的考察を得るため、裸子植物内の他の分類群の生殖過程も詳細に比較する必要がある。
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