2002 Fiscal Year Annual Research Report
ネコノメソウ属イワボタン群の分類学的、系統地理学的研究
Project/Area Number |
14540650
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
若林 三千男 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50087152)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 紀行 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (40305412)
|
Keywords | ネコノメソウ属 / イワボタン群 / 分類の再検討 |
Research Abstract |
日本の固有種であるイワボタンの仲間Chrysosplenium macrostemon s.1.は本州の太平洋側、四国、九州に広く分布し、5つの変種、すなわちイワボタンvar.macrostemon、ニッコウネコノメvar.shiobarense、ヨゴレネコノメvar.atrandrum、キシュウネコノメvar.callicitrapa、サツマネコノメvar.viridescensが知られている。しかし、これら種内分類群の実体は十分には把握されていない。この原因は主に、乾燥標本では失われてしまう生きた状態での形質(特に花形態)や種子表面構造などの変異の解析が十分に行われていないためと考えられる。本研究は、多くの集団を対象としたこれら形態学的解析、さらにDNAによる分子系統学的解析を通じてイワボタンの仲間の分類学的再検討を行うことを目的としたものである。 本年度は西日本の特に九州南部、紀伊半島、京都市を中心に現地調査・資料収集を試み、これらの地域で約25箇所50集団のサンプリングを行った。九州南部、紀伊半島におけるサンプリング時期は6月以降であったため、花期は既に過ぎており花形態の観察まできなかったが、各集団でDNA材料とともに多くの果実(種子)の液侵標本を作製することができた。種子表面のSEM観察の結果、突起の長さやその形状に過去の報告にはなかった多くの変異があることが分かった。ネコノメソウ属では種子表面構造は重要な形質であるので、イワボタン群におけるこの様々な種子形態の変異は重要な分類の指標形質であることが予想される。この種子形態と対応した花形態の観察は、現在栽培されている植物および今春のフィールド調査によって行われる予定である。また、本年度の調査の過程で、イワボタン群にごく近縁な新種と考えられる2種が、京都市および三重県で見いだされた。今年度さらに詳しく調査し、公表する予定である。
|