2003 Fiscal Year Annual Research Report
ネコノメソウ属イワボタン群の分類学的、系統地理学的研究
Project/Area Number |
14540650
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
若林 三千男 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50087152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 紀行 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (40305412)
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Keywords | ネコノメソウ属 / イワボタン群 / 分類の再検討 |
Research Abstract |
日本の固有種であるイワボタンの仲間Chrysosplenium macrostemonは本州の太平洋側、四国、九州に広く分布し、5つの変種、すなわちイワボタンvar. macrostemon、ニッコウネコノメvar. shiobarense、ヨゴレネコノメvar. atrandrum、キシュウネコノメvar. callicitrapa、サツマネコノメvar. viridescensが知られている。しかし、これら種内分類群の実態は十分には把握されていない。本研究は、多くの集団を対象としたこれら形態学的解析、さらにDNAによる分子系統学的解析を通じてイワボタンの仲間の分類学的再検討を行うことを目的としたものである。 本年度は主に九州南部、四国、九州を中心に、昨年度採集できなかった花のサンプリングを実施した。また、イワボタン列(Ser, Macrostemon)におけるイワボタンの仲間の系統学的位置を把握するため、この列内の5種43集団(イワボタンの仲間23集団、イワネコノメ6集団、ホクリクネコノメ5集団、ヒダボタン4集団、ボタンネコノメソウ5集団)と外群としてチシマネコノメソウ、コガネネコノメソウ、ムカゴネコノメソウを用いた分子系統学的解析を行った。核DNAの5.8SrDNAを含んだITS領域のシークエンス解析によって構築された系統樹では、3つのクレード、すなわち日本海側に比較的偏った分布をしている3種(ホクリクネコノメ、ボタンネコノメソウ、ヒダボタン)(クレード1)、イワネコノメ(クレード2)、イワボタンの仲間(クレード3)が認められ、さらにクレード2とクレード3は61%のブートストラップ確率で単系統となった。すなわち、この解析によればイワボタンの仲間はイワネコノメに最も近縁であることが推定される。今回の解析ではイワボタンの仲間内では多くは多分岐となり集団間の系統関係は不明瞭であったが、今後、イワボタンの仲間内の集団数をさらに増やしイワネコノメを外群として解析することで、よりよい解像度が得られると期待される。また他の核遺伝子領域(ETSなど)も解析する予定である。昨年度京都および鈴鹿山地で見いだされたイワボタンの仲間に近縁な2種は、新種であることが確認された(仮称ヤマシロボタンおよびスズカボタン)。来年度中に公表する予定である。
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