2004 Fiscal Year Annual Research Report
ネコノメソウ属イワボタン群の分類学的、系統地理学的研究
Project/Area Number |
14540650
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
若林 三千男 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50087152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 紀行 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (40305412)
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Keywords | ネコノメソウ属 / イワボタン群 / 分類の再検計 |
Research Abstract |
日本の固有種であるイワボタンの仲間Chrysosplenium macrostemon s.l.は本州の太平洋側、四国、九州に広く分布し、5つの変種、イワボタンvar.macrostemon、ニッコウネコノメvar.shiobarense、ヨゴレネコノメvar.atrandrum、キシュウネコノメvar.callicitrapa、サツマネコノメvar.viridescensが知られている。しかし、これら種内分類群の実態は十分には把握されていない。この原因は主に、乾燥標本では失われてしまう生きた状態での形質(特に花形態)や種子表面構造などの変異の解析が十分に行われていないためと考えられる。本研究は、多くの集団を対象としたこれら形態学的解析、さらにDNAによる分子系統学的解析を通じてイワボタンの仲間の分類学的再検討を行うことを目的としたものである。 本年度は九州、四国、本州中国地方、紀伊半島、関東の集団で、これまで採集できなかった花、種子・およびDNA解析材料のサンプリングを実施した。また、昨年度の分子系統学的解析結果をふまえ、ホクリクネコノメ、ヒダボタン、ボタンネコノメソウ、イワネコノメを外群として、イワボタンの仲間約30集団について核DNAのETS領域塩基配列による系統解析を行った。ETS領域における系統解析では、意外なことに熊本県五木村2集団(クレードI)とその他の集団(クレードII)の2つに大きく分かれた。クレードII内では集団間の小さなまとまりはいくつか認められるものの、全体として多分岐となり、明確な系統関係把握には至らなかった。今後より多くの集団を含めた分析をするとともに、ITS領域もあわせた解析を行い、より解像度の高い系統樹構築をめざしたいが、より進化速度の速い核DNA領域の探索も必要であろう。一方、花および種子表面の形態変異は地域によって著しく、九州南部に分布するサツマネコノメ、紀伊半島高野山に分布するキシュウネコノメ以外にも四国西南部、紀伊半島南部一帯、伊豆半島の集団で種子の突起が著しく長いことが分かった。花形態変異の詳細な観察を含め、形態観察による分類地理学的なまとめを行う予定である。また、核DNAのETS領域の系統解析で明らかとなったクレードIの熊本県五木集団の形態学的特徴についても詳細に観察していきたい。
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