2004 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア人および縄文人の起源に関する形質人類学的研究
Project/Area Number |
14540664
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Research Institution | SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
松村 博文 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70209617)
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Keywords | 東南アジア / 縄文人 / 新石器時代 / 歯 / 頭骨 / ニア洞穴 / タイ / ノンノクタ |
Research Abstract |
本年度は米国ネバダ大学ラスベガス校を訪問し、1960年代に米国調団によって発掘されたタイのノンノクタ遺跡およびマレーシアのニア洞穴の新石器時代末から初期鉄器時代の人骨約200体の頭骨および歯の形態学的データを採取した。前年度にハワイ大学で調査したタイのバンチェン遺跡の資料を含めた歯の計測・非計測的形質の統計学的分析の結果、ノンノクタ遺跡の集団はバンチェンと同様に計測的形質は現代および新石器時代の華南の中国人と共通しており、日本の縄文人とは異なっていた。一方、非計測的形質ではいわゆるシノドント型集団とスンダドント型集団の中間的特徴をもち、縄文人とも共通していた。東アジアおよび東南アジア全体を見渡した先史時代と現代の集団関係から解釈すると、いわゆるスンダドント型歯列を純粋に保持している集団は、計測的特徴を兼ね併せてみると、アンダマン諸島人、メラネシア人、オーストラリア先住民、ホアビン文化期および新石器時代初頭のインドシナ半島の先住民のみが該当し、東南アジアの新石器時代後半は、中国南部からのシノドント型集団の拡散の遺伝的影響を受け始める転換期となる時代であると解釈できた。その影響は計測的形質に大きく現れ、タイの新石器時代人に著実であった。非計測的形質にも、これらの集団がシノドントとスンダドント型歯列の中間形態をもつことで北方からの遺伝的影響が示唆された。新石器時代の終わりは、中国南部からの稲作農耕の伝搬時期とも一致し、東南アジアへのインドシナルートでの北からの新集団の拡散と移住の過程が一層明らかになったといえる。日本人の起源については、先住民と渡来人の混血から成ったとする二重構造論が支持されているが、この現象は日本に限らず、広く東南アジア全体にも当てはまることが明らかであり、Bellwoodらが主張する中国南部からの拡散混血説を強く支持する結果が得られた。
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Research Products
(6 results)