Research Abstract |
本研究は,一様流中の翼から発生する離散周波数騒音の発生機構の解明を目的として,(a)翼面境界層の乱流遷移流れ,(b)境界層の局所的はく離に起因する組織性流れ,(c)翼後方領域に形成される乱流後流中の大規模組織構造等の組織性変動流れという三つの組織性変動流れに着目し,その発生機構を解明するとともに,合理的な制御法を提案することを目的としている. 本研究の研究内容と得られた主な成果は,以下のとおりである. 1.空力騒音の音源分布探査法の開発と,その精度検証 翼面上に形成される音源の強さ,位置とその分布形状を高精度に計測するために,小型圧力センサーを直接,流れ中に挿入して流れ場全体の音場を計測し,近距離音響ホログラフィ法を適用して翼面上に音場を再構成する手法の開発を行い,その精度検証を行った. 2.流体騒音の音響特性評価 供試翼として翼弦長200mm,翼スパン150mmのNACA0010,NACA23012,NACA65(0) 10を用いて,翼から生じる離散周波数騒音の音響特性評価を行った.実験パラメータは(1)翼型(上記3種類),(2)流速(5〜25m/s),(2)迎え各(-10°〜10°)とし,発生するする離散周波数騒音を精密騒音計,FFTを用いて分析することによって,各供試翼の騒音発生条件と騒音の周波数,レベルの関係を明らかにした. 3.翼面近傍の組織性流れの検討 供試翼の翼面近傍における速度変動をFFT分析し,離散周波数騒音が発生している場合と騒音が発生しない場合との相違を検討した.その結果,翼型によらず離散周波数騒音が発生する場合には,翼背面および翼腹面の境界層の遷移点近傍において離散周波数騒音と同じ周波数の変動流れが生じていること,その変動と騒音は高いコヒーレンシーを示すことを確認した. 4.翼面近傍の組織性流れの定量的評価 翼面近傍の変動流れに,離散周波数騒音信号を基準信号とした位相平均処理を施すことによって,騒音と完全に同期した変動流れ成分のみを抽出し,計算機援用可視化法を用いて分析した.その結果,翼面境界層の乱流遷移に起因して境界層内に生じる周期的な渦流れが翼後縁近傍で生じる場合にのみ離散周波数騒音が発生することを確認した.
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