Research Abstract |
湖あるいは外洋などの自然環境における超音波発信源定位では,以下の問題を解決する必要がある. 1.低SNR:水中では,センサの固定器具や船体に打ちつける波や陸上での振動源などが主な雑音源である.信号源定位可能な距離の限界をどこまで延ばせるかは,どれほどの低SNRまで雑音に埋もれた信号を処理できるかにかかっている. 2.マルチパス:湖底あるいは海底からの反射の他に水面からの反射のため,水中はマルチパス環境であり,信号源定位の精度向上には,最もパスの短い信号から発信器を定位する必要がある. 本研究では,水中の超音波発信源に対して,低SNRに耐え,マルチパス環境で動作し,かつ効率的に動作する信号検出および信号源定位のための装置を開発・実装し,これを洞爺湖におけるサケの自動追跡システムに実際に利用する. 平成14年度では,環境雑音に対する対策が取りにくいアナログ回路の処理を必要最小限にとどめ,信号の受信処理から信号源定位の処理までの大半をディジタル信号処理に置き換えて,雑音対策を強固にするための基本的枠組みを開発した.これは,低サンプリング周波数で実時間動作する「信号検出部」と高サンプリング周波数で動作する「方位推定部」から成り,「信号検出部」を完成させた.平成15年度では,「方位推定部」を完成させた.また,マルチパス対策のために,マルチパスによって生じるコヒーレントな受信信号数検出が必要になる.信号数検出の時間分解能を上げるためには,少ないサンプルを用いて検出を行う必要があるが,従来の手法は十分なサンプルデータが入手されていることが前提であるため,少数サンプルに対応したコヒーレントな受信信号数検出法を開発した.平成16年度では,洞爺湖におけるサケ自動追跡を目的としたロボット船を試作し,洞爺湖において実験を行った.ロボット船は,全長約4.4mのカヌーに,GPS,コンパス,および音源定位装置,船上局コンピュータを搭載したものである.船上局コンピュータが,データを統合してロボット船を制御する.ロボット船の自動航行をテストし,設計通りであることを確認した.音源定位装置については,異常電圧によりPCI拡張装置が故障したため,高速サンプリングのA/Dボードが使用不能となり,水中における音源定位装置の性能確認はできなかったが,代わりに低速A/D変換器を利用した音源定位の性能を確認し,これは利用不可能ではないが,精度が十分ではないことを確認した.今後,高速サンプリングのA/Dボードを利用した音源定位装置の性能確認が必要である.
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