Research Abstract |
本研究は,比較的人工ノイズが少ないVHF帯(FM放送帯)に着目し,地震に伴う電磁現象の検出を目的として,広島市立大学(広島市),茨城大学(日立市),北海道工業大学(札幌市)の3大学で共同研究を行った。受信レベルの変動が地震によるものを識別するため,複数の異なる観測点での同一現象の観測を行った。 また,信頼性の高い観測を実施するため,電波観測における3大要素である,観測方法,アンテナ,電波伝播について,それぞれ3大学の研究チームで分担し研究を行った。 平成16年度は,シンセサイズドPLL型FMチューナを用いた2周波法による統一仕様の観測系を,広島市立大学,北海道工業大学,茨城大学に構築し観測を継続した。その結果,2周波法により検出した電磁波が,広帯域な電磁波か,それとも遠隔地のFM放送波を受信したものか,容易に識別できることを明らかにした。結果をまとめ論文雑誌に投稿し掲載が確定した。また10月23日に発生した新潟県中越地震では,米沢観測系が,地震に呼応した広帯域な電磁波を検出し,地震に伴い電磁波が発生することを明らかにした。 また,FM放送波の到来方向について,FM放送局が遠方に存在する場合でも,すべての放送局について特定可能であることを確認した。また受信電力変動について,山岳回折や大地反射による損失を考慮して理論式から導出した受信電力とよく一致する結果が得られた。これらの結果より,地震に呼応して発生する電磁波に関し,推定された到来方向は信頼できるものであり,マルチパス伝搬による反射波の影響は受けないことを明らかにした。 なお,本研究においては24時間昼夜連続観測を行ない,かつ観測データはすべて遠隔制御によりインターネット経由で,データ取得できるように構成した。その結果,観測系のパソコンは常時インターネットに接続された状態にあり,観測当初は外部からのDoS攻撃や,ウイルス攻撃を受けたが,パーソナル・ファイアウォールやセキュリティ対策を講じた結果,安定かつ連続に観測を行うことができた。
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