2004 Fiscal Year Annual Research Report
デジタル高度情報を用いた衛星搭載降雨レーダ地表面エコーの上端位置決定に関する研究
Project/Area Number |
14550425
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Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
阿波加 純 北海道東海大学, 工学部, 教授 (40232079)
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Keywords | TRMM / 降雨レーダ / 地表面エコー / デジタル高度情報 |
Research Abstract |
宇宙からの降雨観測は温暖化などのグローバルな気候変動の解明に重要である。特に衛星搭載降雨レーダは降雨の3次元構造を直接定量的に精度よく測定し、宇宙からの降雨観測において中心的な役割をはたしている。ところで、現在運用中の熱帯降雨観測(TRMM)衛星搭載降雨レーダの観測では、チベットやアンデスなどの山岳地域で、非常に小さな発生確率ではあるが地表面エコーを降雨エコーと誤判定することがあり、レーダ工学上の一つの問題となっている。本研究の最終目的は、衛星搭載降雨レーダの観測で地表面エコーと降雨エコーとを高精度で分離することであるが、このためには正確なデジタル高度情報が必要である。幸いなことに、TRMM衛星搭載降雨レーダ自体のデータを地表面高度算出に使用できる。この標高マップの作成において、全て(49方向)のアンテナ指向方向のTRMM衛星搭載降雨レーダデータを用いた場合、1ヶ月弱のデータで観測域をカバーする。平成16年度は、これまでにTRMM衛星搭載降雨レーダのデータで作成した1998年2月と9月の2km×2kmグリッドの地表面デジタル高度情報(標高マップ)と、既存のテジタル高度情報としては最も精度が良いとされているSRTM(Shuttle Radar Topography Mission)の30秒角の全球データであるSRTM30(水平方向分解能1km)との比較を行った。チベットやアンデスなど山岳地域でTRMM衛星搭載降雨レーダで求めた標高マップとSRTM30との差は大きくなるが、両者の差の分布は非対称でSRTM30の値が大きくなっている方にかなり偏っていることがわかった。エベレストを含む領域で詳しく調べると、SRTM30には山頂の値に近い8000mを超える標高が格納されており、また1箇所だけであるが標高値が1万mを超えるといった雑音的なふらつきが見られるなど、標高の変動が激しい。これに対し、TRMM衛星搭載降雨レーダで求めた標高マップはSRTM30の裾野をなぞる形となっていることが判明した。このように、山岳地域におけるSRTM30の標高値は1kmグリッドでの平均値ではなく最大値のように思える。衛星搭載降雨レーダ観測における地表面エコーと降雨エコーとの分離には、地表面エコーのピーク位置の決定と、地表面エコーの上端位置の決定の2段階が必要となる。地表面エコーのピーク位置の決定にはTRMM衛星搭載降雨レーダで求めた標高マップの使用が有益である。他方、地表面エコーの上端位置の決定には1km分解能での標高の変動が必要で、この目的にはSRTM30の使用が適していると結論できる。あるいは、SRTM30のデータを10km程度の範囲で使用し、メディアンを使用するのが有効との見通しも得ることができた。現行の衛星搭載降雨レーダの標準アルゴリズムに本研究の成果を反映させることは、今後の課題である。
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Research Products
(1 results)