Research Abstract |
前年度報告した大径厚比を有するコンクリート充填薄肉円形鋼管部材(以下,CFTと称す)に引き続き,ここでは,部材の軽量化を目指し,内鋼管を配置し断面を中空化した大径厚比を有するコンクリート充填薄肉円形二重鋼管(以下,DCFTと称す)の中心圧縮特性を実験的に調査した.用意した供試体は,公称鋼管厚すなわち外鋼管厚が1.0,1.6ならびに2.3mm(径厚比D/tは各々176,105ならびに74に相当)の3種と外鋼管径に対する内鋼管径の公称比(以下,内外鋼管径比と称す)が0.0,0.23,0.47ならびに0.70の4種を組合せた計12体である.なお,内鋼管には外鋼管と同じ肉厚のものを用い,設計コンクリート強度は24または30MPaクラスであった.また,計測は部材の軸方向平均収縮量と外ならびに内鋼管の表面での軸方向と円周方向のひずみであり,実験中は外鋼管に主点を置いた変形状況の観察を行った. まず,観察された破壊形式は,充填コンクリートのすべりせん断破壊と内・外鋼管の局部座屈にて形成されており,前年度の内鋼管を有さないCFTに類似していた.つぎに,得られた中心圧縮耐力は外鋼管による充填コンクリートの拘束効果を考慮したCFTの算定式を準用することにより良好に評価することができた.さらに,0.5%以下の軸ひずみ領域では,内外鋼管径比の大小による挙動差,たとえば軸圧縮剛性の差異は認められなかった.また,大半の供試体では,中心圧縮耐力到達後の軸ひずみ4%領域まで,耐力の約70%を保持した.最後に,外鋼管の円周方向応力は対応する軸方向応力が降伏局面に到達した後,引張領域へと流動した.一方,内鋼管では軸方向応力が降伏局面に到達した後,圧縮領域へと流動した.これは充填コンクリートが終局状態すなわちせん断破壊時において体積膨張を呈するダイレタンシー現象に起因するものと考えられた. 前年度報告要旨と上述の成果より,建築学会SRC規準などの既往の設計基準類にて提示される制限径厚比(D/t=150,鋼種SS400相当)を超える一般的なCFTならびに軽量化を図るために内鋼管を配置した中空断面を有するDCFTのいずれも,制限径厚比以下にて適用される中心圧縮耐力評価式にて,その耐力を良好に評価できることが示された.
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