Research Abstract |
平成15年度は,科学研究費申請書に記載してある研究計画・方法に基づき,集成材を使用した近代木橋(かりこぼうず大橋)に対する実橋実験の実施,実験と3次元構造解析の両面から近代木車道橋の静的・動的挙動と特性評価,振動使用性,動的増幅率などの実態を検討した.また,他の近代木橋との構造特性の実態把握,設計係数の検証,振動使用性,ハイブリッド型木橋の剛性評価,走行車両による近代木橋の3次元動的応答解析法の定式かなどを検討した.その結果,以下の知見と成果が得られた. (1)平成15年7月に世界最大のキングポストトラス木車道橋(かりこぼうず大橋:宮崎県)の静的・動的な実橋実験を実施し,実験データの分析と3次元構造解析を行い,対象橋梁の構造特性と剛性を検討した.その結果,静的たわみと動的な振動特性(固有振動数,振動モードなど)に比較的整合する3次元構造モデルが作成された.応答振動としての変位,速度,加速度波形から,振動の大きさは通常の鋼道路橋とほぼ同じレベルであること,設計係数(衝撃係数)は安全側の値が採用されていること,振動使用性では特に問題がないことなどが検証された. (2)過去に実験が行われた19近代木橋を対象に,静的・動的としての構造パフォーマンスの実態評価を検討した結果,特に鉛直曲げ1次固有振動数から橋梁の鉛直曲げ剛性を評価すると近代木橋は鋼橋やコンクリート系橋梁と同等な剛性を有していること,減衰性能も他の一般的な橋梁と同程度であるが,下路式アーチ木橋は床組み構造の違いから減衰性能が若干小さい傾向を示すことが判明された.また,近代木車道橋の実験値である動的増幅率を木橋特有の考え方である一つの動的応答係数として定義し,動的応答係数と設計衝撃係数との関係,性能照査型設計法における性能規定への適用法を検討した. (3)近代木歩道橋(神楽橋,希望の丘公園木歩道橋)を事例に,わが国,BS,カナダオンタリオ州,DIN,ユーロコード5など諸外国の示方書や基準を検討し,歩行者が歩行時に受ける振動感覚の観点から振動使用性と性能規定の定式化を検討した.さらに,坊中橋と八丁つなぎ橋を対象に,鋼板を挿入した集成材のハイブリッド型近代木橋に対する剛性評価と実験と整合性がある制度の高い剛性換算式の作成を検討した. (4)走行する大型車両を3次元11自由度モデルにした近代木車道橋の3次元動的応答解析法の完全な定式化を検討し,近代木タイドアーチ車道橋(百名石橋)を事例に,実験での振動応答波形と動的応答解析結果との比較を行い,精度の高い動的応答解析法をほぼ構築することが出来た.
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