2002 Fiscal Year Annual Research Report
酸性雨の長距離輸送モデルとその酸性降下物が樹木の生育に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
14550507
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
長谷部 正彦 宇都宮大学, 工学部・建設学科, 教授 (80042307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 善晴 宇都宮大学, 工学部・建設学科, 助手 (80344901)
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Keywords | 酸性雨 / 長距離輸送モデル / 拡散 / 物質モデル / 湿性沈着量 / 酸性降下物 |
Research Abstract |
1.湿性沈着量の長距離輸送解析;850hPaで流跡線に沿った空気塊を4日前まで追跡しながら移流過程における硫黄酸化物の変質,乾性沈着を考慮,降雨域では湿性沈着も併せて計算する.その汚染物質が栃木県内に流入,除去さらに生成・消滅を考慮して拡散式と物質モデルにより湿性沈着量を求める.(1)拡散式では混合層の高さは,気象条件,地表面状態によって変化するが,それらを考慮せず1000mで一定とした.(2)物質輸送モデルでは,大気中の硫黄酸化物,硫酸エアロゾル及び雲水中の硫酸イオンについて考慮した.モデルでは,硫黄酸化物からエアロゾルへの気相酸化反応のみを考慮した.(3)計算領域と気象データでは,東経110度から150度,北緯20度から60度で,1°×1°の格子で計算を行い,気象データは,気象庁による高層気象観測データの風速データの風速場によって輸送されるとした. 2.酸性土壌が樹木(苗)の生長反応に与える実験的検討;樹木への酸性降下物の影響として,土壌酸性化による生長阻害が指摘されている.そこで,人為的に酸性化した黒ボク土でスギ,コナラ,シラカシの1年生苗を長期間<336,687>育成し,酸性土壌が樹木の生長反応に与える影響を検討した. 2.1実験結果;土壌への酸性物質の負荷は土壌の酸中和能を低下させ,長期的な酸中和能の維持は見込めず,将来土壌pHの低下を引き起こす可能性があると考えられた.樹木は土壌酸性化に対し酸性化を阻止する働きがある.スギは地上部、地下部ともにコナラ,シラカシより酸性雨に対し感受性が高いと考えられた.H+以外に生長低下の要因として一つはAlの溶出による植物必須元素の吸収阻害である.本実験においては,(K+Mg+Ca)/Alモル比100前後で生長評価する必要があると考えた.もう一つの生長低下の原因は,自然状態における土壌中の植物必須元素不足である.これは降雨により溶脱されるためである.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 河田 康弘 他: "酸性土壌がスギ,コナラ,シラカシ苗の生長反応に与える影響の実験的研究"土木学会第58回年次学術講演会講演概要集. 第7部門. (2003)
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[Publications] 長谷部 正彦 他: "栃木県内の湿性沈着量と人工酸性化土壌がスギ,コナラ,マテバシイの苗木の生長に及ぼす影響"水文・水資源学会誌. 14・1. 3-12 (2001)
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[Publications] 粂川 高徳 他: "大気中の硫黄酸化物濃度場の推定を用いた降雨による除去過程解明の試み"環境システム研究論文講演集. 449-454 (2000)
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[Publications] 長谷部 正彦 他: "栃木県内における酸性降下物の分布特性"土木学会水工学論文集. 44. 1137-1142 (2000)