2003 Fiscal Year Annual Research Report
閉鎖性地下水系の都市周辺地下水の複数涵養域の特定と流動経路の解明
Project/Area Number |
14550542
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中屋 眞司 信州大学, 工学部, 助教授 (70313830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中屋 晴恵(益田 晴恵) 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70183944)
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Keywords | 地下水 / 涵養源 / 流動経路 / 水質 / 環境同位体 / 断層 |
Research Abstract |
本研究は閉鎖性地下水系の1つである松本盆地南半部地域の地下水の涵養源・流動経路・混合メカニズム・汚染の拡大状況を明らかにし,地下水の有効利用と保全のありかたを検討するために計画した。本年度は、およそ100箇所の地下水を採取して地下水の主要溶存成分の水質組成や酸素と水素の安定同位体およびトリチウム濃度を測定し、地球化学データに基づいて流動経路を解明した。保存量である酸素および水素の安定同位体比、塩素イオン濃度の分布、主要溶存成分の主成分分析で得た主成分得点の空間分布に基づき、浅層と深層の仮の流動経路をまず求めた。次に、流動経路と各経路の流量比を同定するために、単純混合理論を適用して計算した酸素および水素の安定同位体比の計算値とそれらの実測値の残差平方和が最小になるように、繰り返し流動経路および各経路の流量を修正する非線形最小二乗法を用いた。 同定した流動経路とトリチウムの分析結果を用いてその地下水の年代、滞留時間の推定を試みた結果、松本盆地の地下水流動経路は、浅層地下水では7経路、深層地下水では10経路が特定された。トリチウム濃度の測定結果から、浅層には3.7±0.2TU〜4.6±0.2TUの平均滞留時間が現在〜およそ20年程度の比較的新しい地下水が存在するのに対し、深層には0.3TU以下の少なくとも50年以上経過した古い地下水、4.0±0.2TU〜4.5±0.2TUの平均滞留時間が現在〜およそ20年程度の新しい地下水、およびその中間の2.3±0.2TUの地下水の3種類が存在することが分かった。その結果、松本盆地の浅層地下水系において特定された流動経路のうち、盆地南半部領域の流動系の出口に位置する梓川沿いの経路は、新しく、軽い地下水系で、流量が多く、流動速度が速いことがわかった。そのため、梓川沿いの経路が流動バリアとなって、盆地の地下水流動系の閉鎖性を助長している。また、深層地下水系では、赤木山断層付近で軽くて古い地下水が滞留していること、F-B断層に沿って浅層から流れ下ってきた重く新しい地下水経路が水質と酸素、水素の安定同位体比およびトリチウム濃度から支持された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Nakaya, S., T.Yoshida, N.shiori: "Percolation conditions in binary fractal fracture networks : applications to rock fractures, and active and seismogenic faults"J. Geophysical Research-Solid Earth. 108・B7. ECV8-1-13 (2003)
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[Publications] Nakaya S., A.Ikeuchi, I.Ohmiya, H.Komiya, H.Masuda, M.Kusakabe: "Field investigation of groundwater contamination on nitric acid in Matsumoto Basin, Nagano, Japan"Proceedings of the International Symposium on Groundwater Problems related to Geo-Environment, Okayama, Japan. 387-391 (2003)
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[Publications] 小宮洋行, 中屋眞司, 益田晴恵, 日下部実: "酸素および水素同位体比と水質から見た長野県松本盆地中・南部地域の広域地下水流動系"日本地下水学会誌. 45・2. 145-168 (2003)