2004 Fiscal Year Annual Research Report
閉鎖性地下水系の都市周辺地下水の複数涵養域の特定と流動経路の解明
Project/Area Number |
14550542
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中屋 眞司 信州大学, 工学部, 助教授 (70313830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中屋 晴恵 (増田 晴恵) 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70183944)
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Keywords | 地下水 / 流動経路 / 自然トレーサー / 単純混合 / インバージョン / 環境同位体 |
Research Abstract |
本研究は閉鎖性地下水系の1つである松本盆地南半部地域の地下水の涵養源・流動経路・混合メカニズム・汚染の拡大状況を明らかにし,地下水の有効利用と保全のありかたを検討するために計画した。本年度は、平成14年度以来、松本盆地で測定した地下水の溶存成分のうち、保存量である酸素と水素の安定同位体比(δ^<18>O,δD)および塩素イオン濃度(Cl-)を自然トレーサーとして、それらのペアダイヤグラムを用いて複数存在する地下水の流動経路を特定する方法を検討した。保存量の中でδ^<18>O-Cl-、δD-Cl-という2種類のペアダイヤグラムを作成し、ペアダイヤグラム上でEnd-MemberとMixing-Lineを複数組決定することで経路の分離を行う。Mixing-Lineと各サンプル点のプロットとの最短距離の2乗である影響度の分布と保存量3成分の濃度勾配から求めた流動方向指標から流動経路を推定する。推定した流動経路と各経路の流量比の特定をはかるために、推定した流動経路間の単純混合を仮定し、インバージョン法を用いて流動経路とその同位体比および流量比を同定する。特徴として、1)地下水の溶存成分のうち保存量を自然トレーサーとしている。2)2種の保存量からペアダイヤグラムを作成し、End-MemberとMixing-Lineを決定し、経路推定に利用した。3)流動経路間に単純な混合を仮定している。開発した流動経路推定法を松本盆地の浅層および深層において測定されたδ^<18>O、δDおよびCl-に適用した結果、浅層地下水系では9経路、深層地下水系では10経路が推定された。また、浅層および深層の地下水系において、δ^<18>OおよびδDの実測値を十分説明できた。さらに、各経路の流量比を推定することができた。浅層地下水系においては、梓川沿いの経路が最も流量が多く、松本南半部の地下水流動系を抑制し、閉鎖性を高めている。塩沢川沿いの経路は断層を経由して流量の大部分が深層地下水へと流入することがわかった。このことは浅層および深層のδ^<18>O、δDの分布だけでなく、硝酸の分布とトリチウム濃度の測定値の分布から支持される。また、F-B断層付近において地下水が滞留していることが分かった。それはδ^<18>O、δDおよびトリチウム測定値の分布から支持された。また、硝酸汚染の拡がる経路が特定された。
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Research Products
(1 results)